業界関係者の間では一時「ゴールデンウィーク明けに山口組分裂問題が一気に解消されるのではないか」という噂が上がっていた。だが、関西を中心に新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加。三度目となる緊急事態宣言が発令され、社会の動きは嫌が上にも停滞し、現在においてもその状態が続いている。そうした中、山口組分裂問題も動きは見られず、不気味なほどの静寂に包まれている。
「六代目山口組サイドでは、すでに勝敗はついていると考えているのではないか。ただ、勢力が縮小したとはいえ、神戸山口組が依然存続しているのは確かだ。同組織が解散しない限り、本当の問題解決には至らない。その妨げになっている要因のひとつが、現在のコロナ禍といえるのではないか」(捜査関係者)
確かにこの捜査関係者の指摘は一理あると言えるだろう。感染者が日本国中で増加している中、ヤクザ社会もご多分に漏れず、SNSでは「〇〇組の〇〇組員がコロナに感染した」などという情報が毎日のように飛び交っている。特に今回の第4波は関西圏で猛威を奮っているがゆえ、関西のヤクザにとってはここに来て、コロナがより一層身近な問題になったというわけだ。それゆえ、有力組織の親分衆の危機感も相当に高まっているという。
「なんといっても、親分衆は高齢者の方々が多い。そのため、コロナ感染についてはカタギの人々よりも神経質になっている人も少なくない。ましてやカタギの企業のように、zoomを使うなどのリモート体制で組織運営するようなことはできない。理由は簡単だ。盗聴されたり、映像という足跡が残ったりする危険性が伴うからだ。そのために、今はどの組織も運営が鈍くなっている。六代目山口組に関してもそうだ。それゆえ、感染が全国的に落ち着くまで、山口組分裂問題の解消も時間を要するのではないか」(業界関係者)
一方で、昨今の不気味なまでの六代目山口組サイドの静けさは、決して油断できる状態ではないという声も出ている。
「分裂問題をめぐる大きな事件はいつも忘れた頃にやってきました。ただ、昨今の情勢を考えても、神戸山口組側が突然なにかを仕掛けることは考えにくいでしょう。一方、六代目山口組はその限りではない。静寂はあくまで表面上のことで、水面下では解決に向けた動きが起きている可能性も十分にあるのではないでしょうか」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
このジャーナリストが話すように、六代目山口組サイドによる神戸山口組に対する攻撃は、突然起きるケースが多かった。だが、それが突発的、刹那的なものかといえば、必ずしもそうとはいえなかった。組織的な入念な下調べや計画立てなどを経て、事件が起きてきたのだ。現在のような静かな時こそ、そうした動きが水面下で起こっているのかもしれないというのである。
果たして、山口組分裂問題が解消され、六代目山口組に対する特定抗争指定暴力団が解除されるに伴い、現在は使用制限中の総本部など関連事務所が以前のように使用される日はいつやってくるのだろうか。現在、神戸市灘区にある六代目山口組総本部は、ひっそりと静まり返っている。