安倍内閣の支持率が「危険水域」とされる2割台となる世論調査もあり、安倍晋三首相の自民党総裁3選に赤信号が灯った。
その安倍首相は4月第2週の週末、大阪に向かった。14日の自民党大阪府連の臨時党員大会に出席するためだった。総裁選での地方党員票をかせぐためと解説されている。前日13日に大阪入りした安倍首相は、東大阪の花園ラグビー場や町工場を視察した後、天神橋筋商店街を練り歩いた。
自民党総裁が地方県連の大会に足を運ぶのは異例。安倍首相が日本維新の会代表の松井一郎氏と元代表の橋下徹氏と親密なことに不満を募らせている大阪自民地方議員の要請にこたえた。安倍首相は昨年末も菅義偉官房長官とともに、橋下・松井両氏と恒例の会食をしている。
首相官邸内には「わざわざ大阪に行かなくても」という声もあったが、安倍首相がそうした声を振り切ってでも大阪に行ったのは、総裁選の党員票かせぎ以外の理由もあった。それは、総裁選で争うことになる石破茂元防衛相への対策である。
長年続く安倍首相と維新の蜜月を、苦々しく見ていた大阪の自民党府議・市議。昨年8月、大阪府議・市議の有志が石破氏を支援する会を立ち上げ、石破氏を招いた会合に11人が参加した。参加市議のひとりは「総裁選の党員投票では石破氏を応援する」と明言している。今年2月には、石破氏が会長を務める派閥「水月会」が大阪で政策セミナーを開催。地方議員など1000人以上を集めた。
安倍首相は、自らの支持率が下がるにつれ、総裁3選が盤石ではなくなってきたことへの焦りから石破氏への警戒を強め、その結果の大阪入りだったわけだ。大阪では、安倍首相は地方議員を自分のほうへ振り向かせるため、「都構想に反対」「住民投票はしょっちゅうやるものではない」などと会合で発言。露骨な維新批判を展開した。これには日本維新の会代表の松井氏が「リップサービスが過ぎるかなと思う」と不快感を示した。
「安倍首相が維新と蜜月を続けてきたのは、悲願の憲法改正で維新の支持を得るためだった。しかし、今はそれよりも総裁3選。これがなければ、改憲もない。だが、安倍首相のこの方針転換は、菅長官との関係をギクシャクさせかねない。安倍首相と維新の仲を取り持ってきたのは菅長官。もともと菅長官が松井氏と親しかったこともあり、“安倍・菅―橋下・松井”という4人の関係が続いてきた。大阪で来年のG20が開催されることになったのも、菅長官と松井氏の関係からだ。官邸が大阪に手柄を与えた。自民党大阪府連に配慮するあまり維新を批判するという安倍首相の対応に松井氏が反発すれば、それは菅長官へ向かう」(永田町筋)
もともと安倍―菅の関係は、微妙という見方もある。
「危機管理や霞が関を人事で牛耳る菅長官の手法に、安倍首相が頼っているため、長官の職から外せないできた。安倍首相は、外せば菅長官が自分の敵側に回りかねないと警戒している。今回の大阪行きで、さらに安倍―菅の距離が広がる可能性も出てきた」(別の永田町筋)
もしそうなれば、安倍―菅―麻生のトロイカ体制にも影響するだろう。
(文=編集部)