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与野党攻防の“フリ”…自民党と立憲民主党、談合の実態 新「55年体制」の確立

文=編集部
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自民党のオフィシャルサイトより

 通常国会は6月16日の会期末に予定通り閉幕した。やはり、伝家の宝刀が抜かれることはなかった。野党は直前まで会期延長を要求し、与党がそれを蹴ると、内閣不信任決議案を提出。一方、与党は「不信任案が出れば衆議院を解散する」と言い続けてきた。しかし結局、与党は不信任案をあっさり否決し、終幕となったわけだが、ここに至る経過は国民騙しの茶番劇だった。

 10日に菅義偉首相が先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出発。当日、立憲民主党、共産党、国民民主党、社民党の野党4党は党首会談を行い、「新型コロナウイルス対策の議論を続けるべきだ」として3カ月の会期延長を求めることで一致した。

 そのあたりからNHKを筆頭にメディアは「与野党の攻防が激化」などと報じ、13日の政治討論番組『日曜討論』NHKは不信任案が主要議題。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「自民党の二階幹事長は『提出すれば衆議院を解散する』と何度も言っているので、解散を覚悟の上で提出していきたい」と強気だった。

 これに対し、G7サミットで外遊中の菅首相は13日(英国現地時間)、同行記者団に野党が不信任案を提出した場合の対応について問われると、「出た時点で考えたい」と解散の選択肢を否定せず、野党を牽制した。

 14日に帰国すると、さっそく自民党の二階俊博幹事長らと会談。野党が求める会期延長の拒否を決め、その後、首相官邸で記者に囲まれた二階氏は、不信任案への対応に関し、「首相に衆院解散を進言する」と改めて凄んでみせた。

 この頃、与党の会期延長拒否を受けて野党4党は再び党首会談を開き、不信任案提出を決定。立憲民主の枝野幸男代表が「戦後最大の危機から国民の命と暮らしを守るという首相としての責任感、自覚、危機感がまったく感じられない」と激しく批判した。

 しかし、野党が15日に衆議院に不信任案を提出しても、菅首相は「解散」を宣言することなく、与党の反対多数で否決された。1週間近くに及んだ内閣不信任案をめぐる一連の動きを見ると、与野党で激しくやり合っていたように国民には映るかもしれない。メディアもそう報じていた。だが、実は先週末金曜の11日の時点で、すでにこんな談合シナリオが永田町の一部に出回っていた。

「14日に菅首相がG7から帰国したら、与党は会期延長要請を蹴り、それを受けて野党が不信任案を提出、与党は粛々と否決」

 実際、その通りになった。

「デキレース。毎度のことながら、自民の森山裕氏と立民の安住淳氏の与野党国対委員長が握っているんですよ。菅政権が望む国会閉幕を野党がのむ代わりに、野党は会期末の“見せ場”をつくってもらったわけです。立民の福山幹事長は『解散を覚悟の上で』なんてカッコイイことを言っていましたが、野党はまだ解散の準備が整っていない。『解散はない』という確信を得ていたから、威勢のいいことが言えたのです」(野党のベテラン議員)

解散などできっこない

 国対委員長2人による談合は、菅首相の長男が絡んだ東北新社による総務省の違法接待問題でも囁かれた。

「菅氏の長男が絡む接待問題は2月中から問題になっていたのに、安住氏は予算案の審議を止めることなく衆議院をすんなり通し、参議院での年度内成立が見えてきた3月15日になって、ようやく国会で関係者の参考人招致が行われた。ただ、それも形だけ。すでに渦中の東北新社社長は引責辞任した後で、国会に呼ばれたのは、何も知らない就任したばかりの新社長。立民党内では相当、不満が出ていました」(立憲民主党議員)

 もっとも、「不信任案なら解散」と凄んだ自民党にしたって、あくまでポーズにすぎなかった。菅政権は今解散なんて打てるわけがないからだ。少なくとも6月20日までは、東京や大阪などで新型コロナの緊急事態宣言が発令中。新規感染者は減少傾向とはいえ、インド型の変異ウイルスはこれからが本番となる恐れもある。政府のコロナ対策への世論の不満が高止まりするなかで衆議院を解散すれば、「シミュレーションで最悪ケースとされる50議席以上の落選が現実になる」(自民党中堅議員)。

 そのうえ、このタイミングでの解散には、自民党以上に公明党が「絶対にノー」だ。6月25日告示、7月4日投開票の東京都議選が迫っており、ただでさえ党勢に陰りが見える公明党は2つ同時進行の選挙などやれない。

 かくして、与野党共に党利党略。かつて自民党と社会党が裏で握って国会を運営していた、いわゆる「55年体制」が令和の時代になっても続いている。だから、菅内閣の支持率がガタ落ちしても野党の支持率が上がらないのだ。

(文=編集部)

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