24日に告示された新潟県知事選(投開票は6月10日)の立候補者が出揃った。元新潟県五泉市議の安中聡氏(40・無新)、元県副知事で前海上保安庁次長の花角英世氏(60・無新)、元新潟県議の池田千賀子氏(57・無新)の3人。与党の自民・公明は花角氏を支援する。「推薦」より弱い「支持」にしたのは、政党色を薄める狙いがあるからだとみられる。野党5党(立憲民主、国民民主、共産、自由、社民)は池田氏を推薦する。
国政の与野党対決の構図だが、実は告示直前に自民と公明の間で認識の齟齬が浮き彫りになる出来事があった。公明は今年2月の沖縄・名護市長選で使った必勝パターンを、今回の新潟県知事選でも採ると考えていた。
原発(名護市長選では米軍基地)問題の争点化を避け、政党色をできるかぎり見せない一方、自公両党で合同選対をつくり、地方組織を両党本部が全面的にバックアップするというもの。
ところが、新潟県知事選では事情が違った。新潟には自民の有力国会議員が不在で、県議が実権を握っていた。そこへ公明が中央から乗り込み、選挙協力体制を敷こうとした。トップダウンのやり方に自民県連が反発。中選挙区の県議選では、自民県議は自分の選挙で公明とはライバル関係にある。
そうしたことなどから両者は衝突し、大喧嘩になってしまい、公明関係者は「自主投票」の可能性まで口にしたという。
これに慌てたのが自民党本部。首相官邸も巻き込んで自公の上層部間で関係修復を図り、告示前日の23日、滑り込みセーフで自公揃っての花角支援が決まった。
自公の選挙協力の要
自公で思惑がズレている案件は国政にもある。たとえば、カジノを含む統合型リゾート施設(IR) 実施法案。自公ともに今国会中の成立を目指してはいるのだが、公明は会期延長してでも絶対に通したい。
理由は、もともと公明の支援団体である創価学会には、カジノに対して慎重な意見が少なくない。そのため、法案審議が秋の臨時国会や来年の通常国会に延期されてしまうと、来年の統一地方選や参院選への影響が大きくなってしまうからだ。しかし、官邸はできるかぎり会期延長を避けたい。森友・加計問題もあるので国会を早く閉じたいのだ。
そんな微妙なギクシャクを抱える自公をつなぐキーマンなのが、菅義偉官房長官。公明にとって現下の最大の懸案は来夏の参院選。選挙区では、東京、神奈川、埼玉、大阪、愛知、兵庫、福岡で候補を擁立する予定だが、3年前の参院選で新たに候補擁立に踏み出したばかりの愛知、兵庫、福岡の3選挙区は盤石とはいえず、必勝体制を敷く。
これまで自公の選挙協力の要になってきたのが、創価学会幹部とも太いパイプのある菅長官だった。実際、名護市長選でも菅長官が現地に入って動いた。今回の新潟県知事選は、二階俊博幹事長任せだったことが「自主投票騒ぎ」の一因でもある。
「新潟で、最後の最後に自公支援の足並みを揃えられたのも、菅長官がこっそり動いたから。新潟県連の幹事長と極秘に会い、創価学会幹部にも働きかけた結果でした」(自民関係者)
その意味では、公明は来夏も菅長官が選挙に関わるポジションであってほしい。安倍首相の3選で官房長官続投ならベスト、安倍3選がなくても、幹事長などとして執行部に入ってほしいというのが本音だという。
(文=編集部)