大学、二の足を踏む理由
この入試改革によって、受験生の動向にどのような変化が現れるのだろうか。
「商・経済・経営などの社会科学系学部の入試で、変化が出るかもしれません。経済学部のカリキュラムでは、どうしても数学が必要になり、商学部は簿記が必須ですが、入学後の学びを考えながら受験生は学部を選んでいるので、負担の大きい学部は敬遠されます。早大政経学部の入試で今、数学を選択している受験生は4割ぐらいといわれてますから、そのくらいまで受験生が減るかもしれません。
早大は創立150周年に当たる2032年を見据えた『Waseda Vision 150』」という中長期計画を実行中で、18歳人口の減少に合わせて学部生を減らして大学院生を増やすということを言っているんです。今も、人物本位、多面的評価になっているので、推薦入試やAO入試を増やしていくことも考えられます。国公立大学型の勉強をしてきた受験生が流れてくることも考えられますが、全体的には志願者数が減っていくことになるのではないでしょうか」
この動きが他大学に広がっていくことは、考えられるのだろうか。
「文科省の方針に沿った改革ですし、これからどんな分野でも数学の素養は必要になってくるので、文系学部でも入試で数学を課したいというのは、どの大学も考えていると思います。かつて他の私大で文系学部の入試で数学を課したことがありますが、やはり志願者数が減ってしまった。それを考えると、二の足を踏んでしまう大学が多いのではないでしょうか。それくらい早大の入試は思い切った改革です。
『主体性・ 多様性・協働性』については、ウェブ出願時に受験生が自身の経験を振り返って記載することになります。教師が承認するのではなく本人が書くということ、併願学部があっても1回記入すればすべての学部に適用されるというところなど、画期的であることは間違いありません」
かつては丸1日かけて得ていた情報が、今は一瞬で手に入る時代になった。知識偏重の受験勉強は時代遅れなのは確かだが、改革のプロセスにあって、目指す大学によって勉強の仕方がまるで違うものになる。若者たちには、しばらく受難が続くかもしれない。
(文=深笛義也/ライター)