“神社と人を結ぶ”と標榜する神社データベースサイトの「カミムスビ」が、オンラインで全国の神社にお賽銭を送れるとする機能を実装し、それに対して複数の神社が疑問の声を上げて物議を醸していた件につき、カミムスビが公式サイトで釈明した。
カミムスビはオンラインで賽銭を投げる機能をサイト上で公開。それに対し、複数の神社が「無許可で神社の名前と写真が使われている」「当神社はオンライン賽銭なんてやりませんし許可した覚えもありません」「当神社はカミムスビとは何も契約をしておらず、一切関わりがありません」など、無関係であるとして、無許可掲載であることを訴えた。
また、カミムスビから入金されたこともないとして、詐欺の可能性があると注意を呼びかけるツイートも続出した。
カミムスビは、「神社業界は現在“約7割が経営難”という状況にあり、こうした現状を非営利でサポートするために作られた」とアピールし、オンライン上で集めたお賽銭を全国各地の神社に送金する役割を果たすと謳った。
ネット上で詐欺ではないかと疑いの声が続出したことを受けてカミムスビは声明を出し、「現在SNSにて話題の賽銭の内容ですが、詐欺行為は断じて一切行っていません」として、悪意がないことを強調。
そして7月12日、公式サイト上に「各所に対する確認不足や、サイト上での説明不足等により各関係者、神社関係者様、ご心配ご迷惑をお掛けし大変申し訳ございませんでした」と謝罪文を掲載。
さらに、神社本庁と話をして、今回の騒動の経緯と悪意がなかったことを理解してもらったと説明。組織の体制や理念なども説明して、一部共感や応援の言葉ももらったと述べる。
そのうえで、「金銭の受け渡しなどが絡む機能は実装しない」「掲載許可を得てから神社情報を登録」を約束したという。これまでカミムスビは、国内のほぼすべての神社を網羅し、1年に2日しか公開されない神社へも賽銭を送れるかのようになっていた。
一方、昨年11月に神社本庁に相談した際、「お賽銭に限らず、クラウドファンディングやオンライン祈祷、授与などの金銭の絡む機能に関しては、事前の周知と理解が必要となるため、控えるように」との指導を受けていながら、各神社に相談することなく「オンライン賽銭機能」を今年5月から実装したと明かしている。
このように、神社と契約することなく、また神社の了承を得ることもなく、まるでお賽銭を受け取る代理人であるかのようにして、参拝希望者などからお賽銭を集める行為は、詐欺に当たらないのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように解説する。
「オンライン賽銭自体は、ご利益の価値など、神道の協議如何を除いては、法律上の問題はないでしょう。しかし、『奉納する』つもりもないのに金銭を集めたのであれば、詐欺罪(刑法246条。10年以下の懲役)が科せられます。しかし、『賽銭が1万円を超えたら奉納するつもりだった』とのことであれば、残念ですが詐欺罪は成立しません。要するに、『こうするつもりだった』という“頭の中のこと”は、ほぼ立証不可能なので、警察としても手が出せないということです」
また、当サイトを運営する法人が、登記上の住所に実体がなく、無関係な人の住所であったことから、疑惑を深めることになった。ちなみに現在は、バーチャルオフィスを法人の住所としている。カミムスビが行っていた“無承諾で賽銭を集める行為”は、詐欺罪の成立が難しいとはいえ、多くの混乱を巻き起こしたことは間違いない。今後の運営がどのように行われていくのか、注視していく必要があるのではないだろうか。
(文=編集部)
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。