調査担当者は違法行為の事実を「知らなかった」
続けて、議会当日の山口議員の質疑を見てみよう。
「(平成29年度の指定管理者第三者評価結果概要)を見ると、『法令遵守に関する事項』は5段階評価の4.3なんですよ。『高いレベルで市の要求する業務水準を満たしている』(との評価)。削除し、訂正をして、お詫びをし、相手から理解いただいたというが、現実に著作権で違法行為を行ったことは厳然たる事実なんです。そういうことを調査機関の方はわかっているんですかという話をしました。そうしたら、『知らなかった』と(答えた)」
次に山口議員が問題にしたのは、図書館利用者の満足度調査結果だ。「誰のための図書館か」との質問に「もちろん市民のため」と教育長が即答したのを受けて、図書館に対する海老名市民の満足度が大きく低下していることを指摘。
「(利用者の満足度は)前前回の平均である78.2%という数字が記されていました。要するに、(市外も含めた)中央図書館の全体の評価は、約8割が『満足している』と言っている。反面、(市内に在住する)市民の満足度はどうかといったら、もう70%を割り込んで、69.2%なんです」
これに対して教育長が「全体として78.2%。市民サービスは向上して満足しているのは大きいかなと思っています」と回答したのを受けて山口議員は、さらにこう迫った。
「(市内在住者の満足度が)70%を割り込んでも『満足度は大きい』という教育長の判断、その判断が的確なのか。(略)少なくとも、11億円もの投資をしてつくった、そして直営時代の倍以上の予算をかけてつくっているものだから、これは満足度が7割を切ってもいいという判断は、いかがなものかと思う」
そして、アンケート結果で海老名市民の満足度が大きく下がっているにもかかわらず、教育長の図書館に対する評価が年々うなぎ登りに高くなっている不可解さを指摘した。
「ちなみに、教育長は中央図書館のリニューアルオープン後の神奈川新聞のインタビューに答えて、評価70点とされました。今回は85点にしました。その根拠は何でしょうか?」(山口議員)
「70点は及第点だろうというのが私の考え方です。ただし、その当時もさまざまなご意見をいただいて改善を図ってきた。第三者評価にさまざまな異論があるようですが、私自身はそれを受けて、80%を超えるくらいの改善は図られているなと判断している」
ちなみに、ツタヤ図書館の来館者アンケートは、指定管理者であるCCC自ら実施しているもので、職員が直接来館者に質問して回答を得る対面式が基本だ。ネット上では「対面式で回答するなんて、まるで圧迫面接みたい」と批判され、そのような調査方法によって導き出された数字の信憑性そのものに大きな疑問符がついている。
来館者数についてもCCCの独自集計で、「リニューアル前に比べて1.75倍」になったとしているが、純粋な図書館だった時代と、カフェや書店と一体化した商業ビルになった現在との比較は適切ではないと、専門家たちから再三、指摘されている。実際に、図書の貸出冊数を見てみると、直営時代の1.4倍と来館者数の伸びを下回っている。これについても、休館日をなくして開館時間を伸ばしただけの効果ではないかとの声もある。
これらの調査こそ、利害関係のない第三者に、公平中立の立場からの調査を委託すべきところだが、いずれも指定管理者自らが行っている。そのため、調査結果の信頼性には疑問が付きまとう。
次回は、調査対象期間である平成29年度中の違反行為についても、詳しく見ていきたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)