不祥事がなかったかのような高評価
6月12日に開催された市議会での一般質問に立った山口議員は、市立図書館について、「基本協定書等に則った運営がなされているか」「第三者評価の手法に問題はないか」の2点について質問した。
内野優市長による指定管理者制度導入成果をアピールする答弁の後、各部門の責任者が具体的な回答をしたのだが、いずれもまるで何事もなかったかのように淡々としていた。
まず、第三者評価については「市が要求する業務水準を満たしている」「各指定管理者から出された事業提案書の項目及び仕様書の要求事項について書類のチェックや指定管理者へのヒアリングを実施して評価した」と財務部長が回答。
これまで起きたさまざまな不祥事については、教育長が「ご指摘いただくなかで、指定管理者と協議するなかで改善を図ってきた」とアピールし、さらに「指定管理前から比べると1.75倍近い人が来ている」とのデータを示して「図書に親しんでもらえた」と、指定管理者の効果を評価した。
さらに教育部次長からは、運営の具体的改善策が、以下のとおり示された。
・選書問題については、指定管理者内で選書委員会を設置した
・Pマークの返上については、同等の情報管理制度であるISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)規格の認証取得により、情報セキュリティを強化し、改善が図られている
・他社サイトの画像転載については、著作権者へのすみやかな謝罪と利用者への謝罪文のホームページ掲載、業務にかかる社員の著作権研修など改善が図られている
山口議員がリニューアル当初からの問題点を蒸し返したのには、理由がある。それは市立図書館の指定期間の満了を来年3月に控えているからだ。来年度からも、今のままの体制で図書館の運営を継続するかどうかの結論を出す期限がギリギリに迫っており、この議会で追及しないとウヤムヤにされかねない。
事実、第三者評価に先立って行われた1月の教育委員会定例会において、すでに図書館においては「成果が出ている」として、指定管理制度の継続が決定されている。議会で異論が出なければ、あとは指定管理者を選ぶだけで、また次の5年間もCCCによる運営が継続されかねない状況だった。
おりしも図書館界では、16年度から市立図書館を指定管理に移行させていた茨城県守谷市が、指定期間満了を待たずして市直営に戻す決定をしたことを5月に発表し、その毅然とした姿勢が全国の図書館関係者を驚かせたばかりだ。
守谷市の場合、16年から業界最大手のTRCを指定管理者に選定して市立図書館の運営を任せていたが、開始直後から館長をはじめとした職員が次々と退職していたことが表面化するなど、人材確保の問題が噴出。市議会にTRC社長を参考人招致して詳しい事情を聴取し、図書館協議会で専門家たちによる議論を経て、直営に戻す旨の答申がなされた。その結果、「指定管理では、専門知識のあるスタッフを十分に確保できない」との理由から、TRCとの契約解除が決定された。
それに比べて、問題が噴出した海老名市が、ほとんどなんの議論もなく「指定管理者の更新」をすれば、「どうしてもCCCにしなければならない裏事情でもあるのか」と疑問の声が上がるのも無理はない。