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……訊きたいことはいくらでもある。徹底して追い詰めるべきだった。語らせるべきだった。晒すべきだった。宗教的にきわめてストイックだったことは認める。でも最終解脱などありえない。言い逃れるなら論破すればいい。答えに窮して立ち尽くす姿を晒すだけでも意味がある。
今になって麻原を崇拝していることを理由に後継団体についての危惧を口にするのなら、遺骨はどうすべきとか聖地化されるなどと不安視するのなら、意識を取り戻した麻原を徹底的に追い詰めて、公開の場でとどめを刺すべきだったのだ。
何よりも、心神喪失の状態にある人は処刑できない。それは近代司法国家としては最低限のルールのはずだ。
僕はオウムについて、施設内に入って長く映画を撮ったことで、多くの人とは違う視点をたまたま得た。だからこそ見えたことがある。気づいたことがある。だから必死に訴えた。でも届かなかった。叶わなかった。最後にもう一度書く。語らせるべきだった。でもすべて終わった。今はただ茫然としている。本当に悔しい。本当につらい。
でも同時に思う。二つの眼球を失って闇の中で心神が崩壊したまま誰とも話さずに10年以上も大小便垂れ流しのまま放置され続けた麻原にとって、この処刑は最後の救いだったのかもしれないと。
(文=森達也/作家・映画監督・明治大学特任教授、「オウム事件真相究明の会」呼びかけ人)
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