近年、YouTube上にはペット動画があふれている。子猫や子犬の動画は観るものを和ませてくるため、ついつい長時間見入ってしまう人も多いだろう。
その一方で、動物を収益の道具として扱い、批判を浴びるケースも少なくない。たとえば、子猫を拾って保護し、育てる様子を公開していたチャンネルが、“ヤラセ”だったと指摘されたことで炎上した。また、複数の猫を飼育していたが、いつの間にかそのうちの何匹かが動画に出なくなり、虐待死が疑われているチャンネルもある。
そんななか、今年5月に開設されて以降、賛否両論を集めながら日々注目度が高まっているチャンネルがある。
それは『100日後に食われるブタ』と銘打ったチャンネルだ。タイトルからわかるように、2019年12月からTwitter上で公開され大きな話題を呼んだ漫画『100日後に死ぬワニ』をオマージュしたものだ。
今年5月25日、「初めて家に来た、生後75日のミニブタがかわいすぎる…【1日目】」と題する動画を公開すると、その後も【2日目】、【3日目】とミニブタの日常を紹介。かわいいミニブタの様子に虜になる人が続出する一方で、死までのカウントダウンが進むことに悲鳴を上げる人も増えていく。
チャンネル開設から5日後、「2チャンネル」の創設者で実業家のひろゆき氏が「100日後に食われるブタのチャンネル絶対伸びます、賭けてもいいっす。『豚が可哀そう』『肉食ってるヤツは同じことをしてる』とかニュースや議論の的になるので、伸びると思うんですよね」と言及したことから、さらに注目度は高まった。
幼稚園や小学校などで「食育」をテーマとして、鶏や豚を飼育してから食用にする教育を実践しているところも少なくない。このチャンネルの運営者は、「PRESIDENT Online」の取材に企画の意図を「食品ロスに関して自分たちの行動を見直すきっかけをつくってもらいたい」「私たちが食べているものの中にある命の尊さを考えてもらいたい」と語っている。
食育をテーマとしたチャンネルだとしても、本来ペット用の動物であるミニブタを食用とすることは、動物愛護管理法で禁止されている虐待に当たるのではないかとの指摘もある。法的な問題点について、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士に聞いた。
「確かに動物愛護法には『愛護動物をみだりに殺した者は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金(44条)』とあり、豚はこの愛護動物と規定されているので、みだりに殺したりすれば犯罪になります。
しかし、法律というのは、そう簡単にはできておらず、この『みだりに』をどう考えるかが、ものすごく問題になるわけです。国語辞書などでは、『これといった理由もなくやたらに』という意味ですが、法律上は『正当な理由なく』と解釈されています。
このため、家畜を食肉にする行動である屠殺(とさつ)はOKですし、何たら教の教義として、何かの聖なる日に神様に捧げるために動物を殺すといったものも許されることになります」
あくまでも、「正当な理由」があるか否か、が虐待の判断の基準となるわけだ。もちろん、「登録者数をかせぐため」というのはアウト。8月31日、同チャンネルは「ミニブタと過ごす最後の夜です【99日目】」と題する動画を上げた。9月1日22時に、ミニブタの運命の100日目の姿が公開される。
『100日後に死ぬワニ』は最終回を迎えた直後に、アニメ映画化が発表されたほか、コラボワークショップやグッズ販売など、相次いで商業展開したことで、ファンから批判の声が続出した。『100日後に食べられるブタ』は、食べたとしても食べなかったとしても、一定の批判は出るだろう。“最後の日”の動画がどのような展開を迎えるのか、注目したい。
(文=編集部)