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神戸山口組結成は間違いだったのか…山健組の山口組復帰で揺れる「存続の大義」

文=山口組問題特別取材班
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神戸山口組の会合
かつてはメディアの注目も大きかった神戸山口組の会合だが……。

 6年前の8月、日本最大ヤクザ組織である山口組に激震が走った。五代目時代に最大勢力を誇り、山口組の当代となる組長まで輩出した山健組を筆頭に、複数の有力団体が六代目山口組を離脱。新組織「神戸山口組」を誕生させたのである。

 この空前絶後の事態を、普段はヤクザ事情を報じることのない大手マスメディアまでもが取り上げ、山口組分裂騒動は世間の関心を集めることになった。そうした中で、当初注目を浴びたのは、神戸山口組のほうだった。

 神戸山口組が結成の大義として掲げたひとつに「若い衆の将来のために」という趣旨のものがあり、六代目体制を明確に批判したその姿勢は、判官贔屓が多い日本人の関心を惹きつけた。100年を超える山口組の歴史を顧みても、「菱の代紋」と呼ばれきた山口組を割って出たのち、存続し続けてきた組織は存在しない。それは歴史が証明しているのだ。だが、神戸山口組は歴史を変えるべく動いた。

 実際に、マスコミもこれを後押しするようなスタンスを取るところが多かったのではないか。普段、ヤクザの動向になど興味がない人々も、歴史の目撃者になることに興味津々だったのかもしれない。そこには、一種の期待感のようなものさえあったのは事実だろう。

 だが、時間の経過とともに、神戸山口組は衰退していくことになる。山口組事情に詳しい人物はこう話す。

 「山口組は、その100年以上の歴史の中で、暴力を武器に神戸から全国へと進出し、その地域、地域に根付いてきましたが、そこには多くの血と汗と涙が流れているのです。そうした歴史がある中、仮にマスコミや世論を味方につけることで、戦うことなく、暴力以外の力でその存続を実現しようとしても、それは無理なことでしょう」

 事実、分裂後の抗争事件では、六代目サイドが有利にことを進め、特に六代目山口組の髙山清司若頭が出所した2019年秋以降は目に見えて神戸サイドの勢力が削がれていった。

 そして、ついには神戸山口組創設の立役者だったはずの山健組が神戸山口組を離脱後、六代目山口組へと復帰したのである。

 「もちろん、まだ神戸山口組が解散したわけでも消滅したわけでもない。勢力は衰退しているが、いまだ存続しており、分裂問題は解消されたわけではない。だが、神戸山口組の軸であった五代目山健組が六代目山口組へと復帰するという事態が起こったのだ。山口組の未来のため、若い衆の将来のためと発足されたはずなのに、その中心にいた山健組が六代目山口組に戻っていった。盃を反故にしてまで大義を唱えたはずだったのにだ。ヤクザの世界は『勝てば官軍』がまかりとおる世界と誤解されているが、ヤクザだからこその侵してならない規律が存在する。その最たるものが盃だ。そして、武力。結局、この両面において優位に立つ六代目サイドに軍配が上がろうとしている。それが現在の状況といえるのではないか」(業界関係者)

 本来、トップである組長が絶縁などの処分を受けた場合、それまで率いていた組織の名称も消滅したことになる。山健組は、先代組長である井上邦雄・神戸山口組組長が六代目山口組からこの処分を受けているが、今回の復帰にあたって六代目サイドは、これまで数々の実績を残してきた伝統ある組織の名称を途絶えさせることはしなかった。山健組はそれほどの組織であり、今回の復帰劇はそれだけ大きな意味を持つのだ。

 神戸山口組に参画した親分衆らは、配下の組員を引き連れ、山口組から追われたのではなく、自ら離脱し、神戸山口組を結成させた。そこまでの決意を持って起こした行動だったが、今回の五代目山健組の復帰を受けて、「神戸山口組を結成したことは正しかったのか……」という疑問が上がり始めていると業界関係者の間で噂されているという。一方、六代目サイドからは、「年内には全ての問題が解決する」という声が上がっているようだ。

山口組問題特別取材班

山口組問題特別取材班

ヤクザ業界をフィールドとする作家、ライターおよび編集者による取材チーム。2015年の山口組分裂騒動以降、同問題の長期的に取材してきた。共著に『相剋 山口組分裂・激動の365日』(サイゾー)がある。

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