ビジネスジャーナル > 社会ニュース > Dappi疑惑は闇献金の入口?
NEW
長谷十三「言わぬが花、をあえて言う。」

Dappi疑惑は入口?元宿仁・自民党事務総長と闇献金ロンダリング

文=長谷十三
Dappi疑惑は入口?元宿仁・自民党事務総長と闇献金ロンダリングの画像1
「Dappi」のツイッターアカウントより

 Twitterで野党やマスコミに誹謗中傷を行っていたアカウント「Dappi」の運営企業の取引先に、自民党の関連会社「システム収納センター」があったことが判明した問題で、新たな事実が明らかになった。

「しんぶん赤旗 日曜版」(10月24日号)によれば、「Dappi」運営企業の社長は、自民党本部の事務方トップである元宿仁事務総長の親戚を名乗って、党本部や国会などに出入りしていたというのだ。同紙はその裏付けも取っている。元宿氏の親族の土地に、この社長が住宅を新築しており、その際に組んでいるローンの取り扱いが、国会通行証がないと使えない大手銀行の衆議院支店だったと報じている。

 ただ、この事実を大手マスコミはほとんど扱わない。状況証拠のみで、自民党が実際に誹謗中傷を業務として発注したという証拠はどこにもないからだ。事務総長の親族と取引することは違法ではないし、自民党と取引があるからといってTwitterで野党批判をしてはいけない決まりがあるわけではない。

 つまり、元社員などが「私は自民党から金をもらって野党を叩きました」と週刊誌にリークなどしない限り、残念ながら「Dappiゲート」は、これまで数多とあった「疑惑」のひとつで終わる可能性が高いのだ。

 しかし、このような曖昧なかたちで幕引きされることは、国民にとって大きな損失だといわざるを得ない。何十年経過しても一向にクリアにならない、自民党の「政治とカネ」の心臓部にメスを入れる格好のチャンスを逃してしまうからだ。

 実は多くの人が誤解をしているが、今回の「自民党と取引のあった企業がSNSで野党攻撃」という疑惑はあくまで「入口」にすぎない。永田町関係者、捜査関係者が注目していたのは、事務総長の親族企業を用いた「闇献金ロンダリング」の実態が浮き彫りになるか否かだった。

システム収納センターの実態

 なぜそのような話に発展をするのか。謎を解く鍵は、運営企業と取引のあった「システム収納センター」だ。

 多くのメディアは同社を「自民党関連企業」「自民党のダミー企業」などと表現をするが、正確ではない。実は自民党が1977年に設立した「集金会社」なのだ。設立当時の報道を見ると、党本部の経理担当者たちが発案したもので、自民党の政治資金団体・国民政治協会と金融機関と連携をして「党友」からの個人献金を効率良く集金をすることを目的に設立された。現在もHPには「口座振替代金回収」が主な業務とある。

 そこで思い浮かぶのが、事務総長の元宿仁氏だ。1970年代から党本部職員として主に経理畑を歩んできたので同社の設立にも当然関わっている。そして元宿氏といえば忘れてはならないのが、自民党の「政治とカネ」の流れのすべてを把握し、表も裏も仕切った「闇献金の番人」ともいう存在だったという事実だ。実際、2004年、国民政治協会を経由した日歯連の迂回闇献金疑惑などでは、元宿氏は関与が指摘されて、野党は国会へ証人喚問を要求している。また、橋本龍太郎元首相に1億円の「闇献金」を渡した臼田貞夫日歯連会長(当時)が法廷で、元宿氏に会合や出席者の調整を依頼して、事前に1億円を渡すことも伝えていた、と証言をしている。

 そんな元宿氏が、集金会社と、自身の親族企業という2つの舞台装置を使って、どんなことをするだろうか。

 これまで関わってきたと囁かれる「迂回献金」「闇献金」ということを考えれば、真っ先に思い浮かぶ疑惑が、これらの2社を活用した「マネーロンダリング」ではないか。少なくとも、「SNSで野党を誹謗中傷する」というようなスケールの小さな案件を扱う必然性はまったく感じられない。なぜなら、自民党直属の広告代理店「自由企画社」を通して電通に発注したほうがはるかに安全だし、組織的な動きができるからだ。

 1973年に機関紙制作のために設立された同社には毎年、十数億円規模の政党助成金、つまりは我々の血税が投入されており、それが電通に丸投げされている。が、どれくらいこの会社が「中抜き」をしているのか、何に使われているのかという内訳は明らかになっていない。システム収納センター同様に、開示義務がないためだ。

 それは裏を返せば、この会社からテレビCMや新聞・ネット広告と抱き合わせで電通に「野党を誹謗中傷するSNSアカウントの運営」を依頼することも可能ということだ。もちろん、電通もコンプライアンス的に自分たちではそのような「汚れ仕事」はできないので、グループ会社や下請け、フリーランスなどいくつかのクッションを挟むのである。

 広告代理店業界の人間ならばわかると思うが、これがSNSやネットにおける「汚れ仕事」の基本的な発注スキームなのだ。これならば、もし開示請求などでアカウントが特定されたとしても、代理店にダイレクトに結びつけられない。クライアントの安全が守られるのだ。

「闇献金」の新しいスキーム?

 しかし、今回の「Dappi」はこのような「常識」をすべて無視している。広告・PRを担う自由企画社ではなく、システム収納センターが窓口になっている。しかも、この手の裏仕事ではご法度とされる「直取引」。開示請求されれば、すぐに自民党との繋がりがバレる。政党助成金を注ぎ込んで世論誘導をする、というスケールの大きな不正行為のわりに、舞台装置があまりにも稚拙、あまりにも「雑」なのだ。

 しかし、元宿氏の親族企業がシステム収納センターと取引をしていたのは、「SNSで野党を誹謗中傷する」ためではなく、もっと他の目的だとすると、この「雑」な感じも辻褄が合う。

 外部からは、元宿氏の親族企業のカネの流れはまったくわからない。仮に、ここに自民党の裏金を入れて、取引先を挟んで、特定の候補者や支部にカネを流すようなことをやられてても、国民はまったくわからないのだ。要するに、元宿氏がかつて追及された「迂回献金」「闇献金」の新しいスキームだ。

 まだまだ謎の多い「Dappiゲート」だが、元宿仁氏と、自民党のカネの流れを扱う企業が登場している時点で、これが単なる「SNSを用いた世論誘導工作」という問題ではないのではないか。

(文=長谷十三)

長谷十三

長谷十三

フリーライター。政治・経済・企業・社会・メディアなど幅広い分野において取材・執筆活動を展開。

Dappi疑惑は入口?元宿仁・自民党事務総長と闇献金ロンダリングのページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!