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札幌ガス爆発、アパマン社員は禁固刑3年の可能性…珍しい「過失激発物破裂罪」か

文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士
札幌ガス爆発、アパマン社員は禁固刑3年の可能性…珍しい「過失激発物破裂罪」かの画像1アパマンショップリーシング北海道・佐藤大生社長(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 札幌市豊平区で16日に爆発が起き42人が負傷した事故に関し、発生元とされる不動産仲介会社「アパマンショップリーシング北海道」の佐藤大生社長が18日、未使用の消臭スプレー缶約120本を店内で一斉に噴射させた後に給湯器を点火したところ、爆発が起きたと認め謝罪した。また、除菌消臭を客と契約しながら、実際には施工していないケースがあり、その際に生じた余剰在庫を処分しようとして室内で噴射させた可能性があり、佐藤社長は北海道内の全店で実態調査を行うと話した。

 爆発の原因とみられているスプレーは、不動産賃貸業者向けに製造・販売されている消臭・除菌を目的とした商品で、可燃性ガスのジメチルエーテルが含まれている。缶には可燃性を示す説明が書かれているが、廃棄作業を行った社員は危険性を認識していなかったという。

 だが、どのようなタイプのスプレー缶でも、火気を近づけることは厳禁であることは一般常識といえる。ましてや、締め切った室内で120本もの未使用スプレーを短時間に一斉噴射すれば、火の取り扱いが極めて危険であることは容易に想像できるはずだ。それにもかかわらず、不用意に給湯器に点火して大爆発を招いた社員は、重過失による失火を問われる可能性はないのだろうか。

 弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士に話を聞いた。

「この社員自身は、『過失激発物破裂罪』という珍しい犯罪が成立する可能性があります。

 刑法第117条は、以下のように定めています。

『火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
2 前項の行為が過失によるときは、失火の例による』

 要するに、過失によって、火薬やガスなどを破裂させて現に人がいる建物を破壊した場合、『50万円以下の罰金』が科されるということです。

 なお、今回は業務中に発生した事件ですし、また常識から外れたトンデモ行動によって引き起こされた事件なので、刑法第117条ではなく刑法第117条の2が適用され、『3年以下の禁固刑または150万円以下の罰金』が科される可能性が高いと思われます」(山岸弁護士)

 では、作業を指示した上司や、店舗、会社も罪に問われる可能性はあるのだろうか。

「上司や店舗、会社については、共同正犯が成立するような特殊な場合ではない限り、特に刑事罰に問われることはないでしょう」(同)

 一方、佐藤社長が、複数の顧客から料金を受け取りながら、入居時の除菌・消臭工事をしていなかったことも明らかにしたが、このようなケースは詐欺罪に該当しないのだろうか。

「除菌・消臭のための費用をもらっておきながら、実際にやっていないのであれば、『利用者は、真実は除菌・消臭をしないことを知っていたら、このための費用は払わなかったので、除菌・消臭のためと騙されて費用を払った』といえ、詐欺罪(10年以下の懲役)が問われる可能性はあります。とはいえ、金額も小さいので、実際は詐欺罪での立件はないでしょう」(同)

 同社は、部屋の大きさに応じ、除菌・消臭代として1万5000~2万5000円ほどの料金を徴収するケースがある。物件によっては、オプションではなく強制することもあるという。その除菌・消臭が、実際には行われていないこともあると明らかになったことで、今後はその是非も問われることになるだろう。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士

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●山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。弁護士法人ALG&Associates執行役員として法律事務所を経営し、また同法人によせられる離婚相談相続問題刑事問題を取り扱う民事・刑事事業部長として後輩の指導・育成も行っている。芸能などのニュースに関して、TVやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。弁護士としては、企業法務交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験を様々な方面で活かしている。

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