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ドトール、突然の業績不振…14カ月連続客数減、顧客満足度も低下の理由

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
ドトール、突然の業績不振…14カ月連続客数減、顧客満足度も低下の理由の画像1ドトールの店舗(撮影=編集部)

 ドトール・日レスホールディングスが岐路に立たされている。これまで、同社の売上高は緩やかながらも増加傾向を示していたが、2018年3~8月期は、前年同期比1.2%の減収となってしまった。

 主力のコーヒーチェーン「ドトールコーヒーショップ」が不振に陥ったためだ。このまま一気に坂道を転がっていくのだろうか。

 ドトール・日レスの18年2月期(通期)の売上高は1311億円。8期連続での増収を達成しており、この間、3割増やすことに成功した。同社はドトールのほか、コーヒー店の「エクセルシオールカフェ」「星乃珈琲店」、パスタ専門店「洋麺屋五右衛門」など複数の飲食店を展開。それぞれ好不調があるが、全体としては増収を保っていた。

 近年で売上高に大きな貢献を果たしているのは、星乃珈琲店だ。店舗によってはブレンドコーヒーを700円以上で提供する高級店。アンティークのソファなどを配置するなどして高級感を演出しているのが特徴だ。11年3月に1号店をオープンし、今年8月末には223店を展開するまでに成長した。店舗の9割強が直営となるが、18年3~8月期の直営店売上高は79億円で、前年同期から9.3%増と大幅な増収を達成している。

 一方、エクセルシオールカフェは厳しい状況が続いている。低価格のドトールよりは高く、星乃珈琲店よりは安いという位置づけで、今年8月末時点で124店を展開している。ただ、近年は不採算店の閉鎖を進めたことで店舗数は減少傾向が続いている。08~10年ごろは170~180店程度を展開していたが、その頃からは3割減ったかたちだ。売り上げも減少傾向が続いている。店舗の8割が直営となるが、18年3~8月期の直営売上高は50億円で前年同期から2.2%減った。

 不調のエクセルシオールを立て直すにしても、好調な星乃珈琲店をさらに広げるにしても、“大番頭”のドトールがあってこそだ。しかし、そのドトールが近ごろ変調をきたしている。

ドトール、急激な業績不振

 ドトールの1号店が誕生したのは1980年。当時のコーヒー1杯の価格は300円程度が一般的だったなか、150円という低価格で販売を始めた。価格の安さがビジネスパーソンを中心に受け、人気を博すようになった。以降、出店を進め、2004年には国内1000店を達成。00年代中盤から現在までは1100店台で概ね横ばいで推移している。

 このようにドトールは店舗数の伸びが止まっているが、安定はしている。既存店売上高も比較的安定している。08年のリーマン・ショック以降の景気低迷で09~11年ごろは落ち込みを見せたものの、それ以降は持ち直し、概ね横ばいで推移するようになった。既存店売上高も成長は止まってしまったが、安定はしていた。ドトールは成熟期に入っているので、これはこれで大きな問題はなかった。

 それが、今年に入って異変が起きた。10月こそ既存店売上高は前年同月を上回ったが、1月から9月まで9カ月連続で前年を下回ってしまったのだ。客数は9月まで14カ月連続でマイナスだ。

 ドトールの不振が影響し、ドトールとエクセルシオールを運営するドトールコーヒーグループにおける業績は悪化している。18年3~8月期の売上高は前年同期比3.9%減の403億円、営業利益は同2.6%減の29億円と減収減益だった。18年2月期は売上高が前期比4.3%増の817億円、営業利益が同6.9%増の47億円と増収増益を達成しており、一転して不調に陥ったことがわかる。売上高は18年2月期まで5年連続で前年を上回るほど好調を維持していた。

 なお、ドトールコーヒーグループと双璧をなす日本レストランシステムグループにおける売上高は好調だ。星乃珈琲店や洋麺屋五右衛門など多数の飲食店を運営しているが、特に星乃珈琲店が増えたことが大きく影響し、18年3~8月期の売上高は前年同期比5.8%増の226億円と大きく伸びている。ただ、アルバイトの時給上昇などによる人件費増により、営業利益は同13.7%減の23億円と大幅減益となった。

 ドトールは業績不振に陥っただけでなく、顧客満足度の順位も低下しており、今後の雲行きが怪しくなってきている。日本生産性本部・サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数(JCSI)」でドトールはカフェ部門の「顧客満足」で17年度まで3年連続で1位だったが、18年度第1回調査ではカフェ・ベローチェに1位の座を明け渡し、ドトールは2位に転落してしまったのだ。顧客満足のスコアも74.1から73.3に低下した。

業績不振&顧客満足低下の原因

 なぜドトールは業績が低迷し、顧客満足も下がっているのか。

 まずは、進化が続く「コンビニコーヒー」の脅威度が高まっていることが挙げられるだろう。13年にセブン-イレブン・ジャパンがいれたてコーヒー「セブンカフェ」の本格展開を始め、これを機にコンビニコーヒーは瞬く間に広まったのだが、そのコンビニコーヒーがこの1年で急速に進化を遂げており、脅威度が急激に増している。

 セブンは今年3月にセブンカフェを刷新し、1杯に使うコーヒー豆の量を約1割増やすなどして美味しさを強化した。ローソンは昨年9月からブレンドコーヒー(Sサイズ)を従来と比べ15秒早く提供できる新型コーヒーマシンの導入を始めた。ファミリーマートは今年10月から希少性が高い「スペシャリティーコーヒー」などをつくれる新型コーヒーマシンを順次導入し始めた。各社、コーヒーの質を高めることに余念がない。さらに、コンビニ各社は店内で飲食する「イートイン」スペースを設けた店舗を急速に増やしている。こうして「コンビニのカフェ化」が急速に進んでおり、ドトールは顧客を奪われていったと考えられる。

 コーヒーにおける消費者の高級志向も影響していそうだ。近年、低価格のコーヒーに満足できず、多少高くても美味しいコーヒーを飲みたいと思う人が増えている。例えば、高品質のコーヒー「スペシャルティコーヒー」を求める消費者が増えている。日本スペシャルティコーヒー協会によると、日本のコーヒー輸入量に占めるスペシャルティコーヒーの割合は16年度が約8%で、14年度の約7%からは増えている。今後の増加も見込まれている。

 高価格だが高品質のコーヒー市場は拡大しており、ドトール・日レスはこの市場に星乃珈琲店を投入することで取り込みを図った。さらに、高級店「神乃珈琲」の展開も始め、星乃珈琲店のさらに上をいく市場の取り込みをも狙っている。

 神乃珈琲は現在、東京・銀座と京都に店を構えている。銀座の店舗に入るとサイフォンが目に入る。アンティーク調の内装で高級感が漂う。メニューはどれも高額で、例えば、コーヒーの品種として最高峰との呼び声高いゲイシャ種を使ったブレンドコーヒーは1杯1026円にもなる。

 スタバも高価格帯の市場の取り込みに動いている。バリスタが1杯ずつコーヒーを提供する「リザーブバー」の出店を進めているのだ。東京・銀座にある商業施設「ギンザシックス」内にある店舗では、通常のスタバの奥にリザーブバーを配置している。このリザーブバーでは、さまざまな産地のコーヒーを626~1425円で提供している。

 さらに、19年2月には焙煎設備併設の新しい高級店「リザーブロースタリー」を東京・中目黒にオープンする方針だ。

 ドトールは自身の成熟化に加え、こういった高級店とより低価格のコンビニコーヒーとに挟まれ両極から圧迫を受けるという厳しい状況に置かれている。また、低価格のコーヒー市場ではベローチェが台頭するなど、同市場内での競争も激化している。ドトール・日レスは主力のドトールの動向次第で業績が大きく左右されることになるが、こういった競争環境にどのように対処していくのか、関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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