平成最後の年の幕開けとなった1月1日。時刻が0時を刻むと同時に、神戸市灘区にある護国神社では、太鼓を打ちつける音が鳴り響いていた。その中を最高幹部を伴った六代目山口組・司忍組長が初詣へと訪れている。
その際、駆けつけた報道陣の誰しもが、ここ数年との異なりに気がついた。山口組分裂以降、司組長を乗せた車両は拝殿のすぐ近くまで乗り入れられていたのだが、今年の拝詣では護国神社の境内に司組長の車両が入ることはなかったのだ。
「山口組の分裂でトラブルが起き、拝詣する一般人までなんらかの巻き添えに遭ってはいけないと警察当局からの指導もあり、拝殿近くまで車両を乗り入れる措置が取られていたのだが、それに対して『警察がヤクザの親分を警備している』と非難する声もあった。ここ最近では分裂に絡んだような目立った衝突も起こっていない。それらを含めて警戒にあたる当局サイドでは、分裂以前の初詣と同じように、司組長らが拝殿まで歩いて拝詣しても問題はないと考えたのではないか」(地元関係者)
ちょうどその頃、神戸山口組でも、神戸市二宮にある神戸山口組事務所に井上邦雄組長をはじめとした幹部らが集まっていたことが確認されている。
「井上組長は二宮の事務所に入って、わずかな時間で同事務所を後にしているのだが、最高幹部の組長らが何人かはそのまま事務所に残っていたようだ」(捜査関係者)
新しい年を迎え、神戸山口組でもあらためて結束を固めるべく、懇親の時間がもたれたと思われる。
その後、年頭の行事も年越し同様に、六代目陣営、神戸陣営ともに同じ日に同じく神戸市内で行われている。
1月10日、六代目山口組が神戸市篠原にある六代目山口組総本部で、幹部および直参組長らが念頭に顔を合わせる行事、いわゆる「初顔合わせ」を行えば、神戸山口組も神戸山口組事務所で新年会を開催しているのだ。
「神戸山口組の新年会は、年末の12月13日に執り行われた納会同様に20分ほどで終了したようだ。新年会と初顔合わせの意味合いが含まれていたのではないか」(地元関係者)
翌11日には、神戸山口組の中枢組織である五代目山健組でも、山健組直参の組長らが山健組本部に集まっていたという。
「山健組ではこの日、執行部会を行い、組織運営に関する今後の協議がなされるのではないかと捜査関係者らはみていたようですが、実際にはそういった動きはなかったようです。山健組でも初顔合わせが行われていたのかもしれません」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
一方、両組織に対して結成以来、2度目の年越しとなった任侠山口組では、年末年始の特別な行事などは執り行っていない。
「任侠山口組では、少しでも組員の負担を減らすため、そういった行事を行わない方針のようだ。ただその期間も組織運営改革は進んでいるようで、新たな直参が内部昇格を果たしたのではないかという話もある」(某組織幹部)
2019年に入り、それぞれの山口組が静かながらも本格的に始動した。
(文=沖田臥竜/作家)
●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。