名目GDPに“水増し”との指摘も
さらに、「毎月勤労統計調査」をベースにしている内閣府の「雇用者報酬」でも賃金の急上昇が認められている。昨年には、経済産業省がまとめる「繊維流通統計調査」で改ざん、「貴金属流通統計調査」ではデータのミス、国土交通省の「建築着工統計調査」では計上ミスが発覚した。今年に入っても、総務省は1月10日、「消費動向指数」に誤りがあると発表、2018年4~11月分を修正するとした。
今月に共同通信社が行った世論調査では、政府統計を「信用できない」との回答が78.8%にのぼった。「信用できる」はわずか10.5%だけだった。政府説明に関しても、69.1%が「納得できない」と回答し、政府統計への強い不信感が浮き彫りになった。
言うまでもなく、政府統計は政策を決定する際の重要なベースとなる。統計上で好ましくないデータが現れれば、それを修正し健全な方向にもっていくために政策が立案・実施される。その政府統計が「不適切な調査であり、実態を表しておらず、改竄されたものであれば、統計自体の信用力がなくなり、その政府統計をベースに企画・立案された政策の意味もなくなってしまう」(政府関係者)と危惧するのは当たり前だ。「さまざまな政府統計で誤りが発覚しており、安倍政権はいくつかの政策を変更せざるを得ない状況に直面する可能性がある」(同)との懸念が出ている。
昨年は、最重要政府統計である名目GDP(国内総生産)でも、恣意的な数字の調査が指摘された。2016年にGDPの推計方法を変更し、「研究開発投資」を追加して加算するなどの見直しを行ったことで、名目GDPが“水増し”された。GDPの信頼性に疑問を持った日本銀行が、データの提供を求め、独自にGDPを算出しようとする事態まで起こった。
改ざん、不適切な調査などにより発表された政府統計の多くが、アベノミクス政策の効果を示すような結果になっていることは興味深い。 “忖度が働いている”との疑問を持たれても仕方ないだろう。国民生活を支える政府の政策のベースとなる政府統計には、絶対に不正があってはならないことはいうまでもない。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)