韓国、日本の天皇へ謝罪を要求する活動広まる…政治的指導者だと勘違い、歪んだ歴史認識
この発言中の「痛惜の念」とは、天皇陛下が1990年に韓国の盧泰愚元大統領が来日した際、宮中晩餐会の発言の中に登場する。天皇陛下は「我が国によってもたらされた不都合な時期に貴国の人々が味わわれた苦しみを思い、私は痛惜の念を禁じえません」とのお言葉を述べられている。つまり、立派に謝罪されているのである。李氏も、天皇陛下には政治的な権力がないということをまったく知らなかったとしかいいようがない。
韓国の通信社「聯合ニュース」によれば、文氏は前出発言の中で「日本の責任ある指導者が、慰安婦のハルモニたちの納得できるような心からの謝罪をすることが優先されなければ」とも語ったという。つまり、文氏は天皇を「指導者」だと考えているに違いない。前述のとおり文氏は「日本通」で通っているだけに、韓国側の日本に対する認識の浅さに驚くしかない。
一国を代表する新聞社にも、同じような例がある。韓国最大の発行部数を誇る「朝鮮日報」が李氏の発言を擁護する目的で、「アキヒトは手遅れになる前に、(ユダヤ人犠牲者慰霊碑前で膝をついて謝罪した)ブラント西ドイツ首相のように膝をついて謝罪する写真を歴史に残すべきである」との主張を展開したことがある。
1970年12月7日、ブラント西ドイツ首相はユダヤ人犠牲者慰霊碑前で膝をついて謝罪しており、その写真が通信社電で配信された。同紙は同じことを天皇陛下もすべきだと主張したのだが、天皇陛下について政治的な指導者として誤って認識していたとしかいいようがない。
日韓関係に暗雲
中国でも日本の戦争責任を追及する際には激しくもなるが、これは江沢民指導部が1989年の天安門事件により、国内情勢の混乱を外交に転嫁しようとして、反日教育を大々的に展開してことが大きな原因の一つだ。これにより、若い世代の日本観が大きく歪められたことは歴史が証明するところだ。
韓国についても、日本統治時代の歴史観を現在の日本観にすり変えられてしまっているところがないとはいえないだろう。歴史は歴史としてしっかりと教えて、そのうえで日本を批判するのならば、まだ理解できるが、天皇陛下の基本的な位置づけすら間違っている教育を糺すほうが先ではないか。
我々日本人も当時の日本の軍部が朝鮮半島で、どのような植民地政策を展開したのかは、十分知っているとはいえないかもしれないが、韓国内で今後もこのようなことが続けば、日本の韓国観も徐々に歪んでしまい、それこそ日韓両国関係は修復の余地がないほど悪化することも否定できないだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)