2月12~17日、日本カーリング選手権大会が行われたが、女子では大企業vs.独立ベンチャーという構図がみられた。
優勝した中部電力は豊富な資金力を有し、2018年12月に新体制になった。平昌五輪男子代表だった両角友佑氏がコーチに就任し、コーチが8投投げて4人の女子と戦う模擬戦を通して、世界レベルのショットを日々体験し、戦力を強化。多彩なショットやストーンの配置に、ロコ・ソラーレのスキップ藤澤五月は「ここまで変わるのか」と驚き、中部電力の急成長に合わせた戦いができなかったという。
中部電力のスキップ中嶋星奈は21歳、北澤育恵と石郷岡葉純は22歳。新しい選手も入ってきた。10戦全勝で6度目のVは当然の結果だった。
一方、五輪銅メダリストとして臨んだロコ・ソラーレは今季、海外中心のゲームが続いた。結果、国内チームへの対策がおろそかになった。それで中部電力に勝てるほど、日本選手権は甘くなかった。準決勝で中部電力に敗れて2位となり、3、4位戦を制した北海道銀行を破って再び決勝で中部電力に挑んだが、3戦3敗となった。予選は延長で6対5と惜敗したが、準決勝、決勝となるたびに中部電力との点差が開いた。
平昌五輪の時にはいた本橋麻里選手がマネージメント(経営)に専念することになりリングに姿を見せなかったことも、心理面での戦力ダウンとなった。何より、エースの藤澤の出来が決勝戦ではとても悪く、11対3で途中で中部電力にギブ・アップした。今後はW杯グランドファイナル(5月北京)に挑むが、中部電力にはかなわない。
優秀なコーチが入った中部電力とは対照的に、ロコ・ソラーレの選手はコーチを頼りにしていなかった。選手間のコミュニケーションも日本選手権では中部電力にかなり劣っていた。スキップの藤澤の指示が的確でなかったこともあるが、スイーパーの動きも鈍かった。
3位は北海道銀行、4位富士急。いずれも大企業である。ロコ・ソラーレ以外は大企業のお抱えチームだ。決戦の場となったリンクは北海道銀行が保有する「どうぎんカーリングスタジアム」だった。
●中部電力、世界選手権の行方
ロコ・ソラーレは8勝3敗。3敗はすべて中部電力。「何が足りなかったかを話し合って、もっとレベルを上げたい」と藤澤。サードの吉田知那美は「日本での状況も変わった。(ロコ・ソラーレは)分析されていた」と目を真っ赤にした。ロコ・ソラーレは若い選手の補強が急務である。厳しい競争が日本女子のレベルを確実に押し上げていく。
中部電力は前回、平昌五輪に出場するための国内での代表決定戦で、ロコ・ソラーレに苦杯をなめた。今回、同じ相手を完全に打ち負かして優勝したわけだ。だが、3月にデンマークで行われる世界選手権で存在感を発揮できるだろうか。ロコ・ソラーレほど海外のチームには勝てないとの見方もある。
ロコ・ソラーレの選手は有名人になり過ぎてテレビやCMに出ているから弱くなったといった冷ややかな声も出るなか、そうした声を強力なストーンで弾き飛ばしてもらいたい。
(文=編集部)