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もちろん、政治的事情で決められたとしても、導入されれば現場の自衛官たちはそれを運用しなければなりません。陸自が導入している大型輸送ヘリコプターCH-47はオスプレイの2倍の輸送力を持ち、自衛隊内でも「これで十分」という声が多いのです。オスプレイは日本の国土が狭いから不要論もあるにもかかわらず、首都圏の木更津駐屯地で試験的に飛行したりしていますが、首都圏での墜落事故も十分あり得ることなのです。今の陸自のパイロットの技量と質を考えれば、飛ばせるのには時間がかかるのです。アメリカの優秀なパイロットでも何人も墜落しています。
大量の武装品を売りつけたい米国
――今回の墜落事故に対して、海外からの関心も高いようです。
杉江 関心の対象は、機体トラブルかどうかの一点に尽きます。もしこれが機体トラブルであれば、ロシアも同様な戦闘機を保有していますので、各国の防衛バランスが崩れます。アメリカとしては、機体トラブルでなければそれでいいという考えです。日本の政権側からすれば、パイロットのヒューマンファクターであれば、F35A導入は早すぎるという議論が沸き起こりますから、日本の政権にとっては打撃です。ですから日米の利害関係は、相反しているのです。
アメリカとしても今後も日本に大量の武装品を売りつけたいので、玉虫色の決着で落ち着く可能性もあります。これからの時代を背負う次世代戦闘機ですから、今、日米ともに冷や冷やしているでしょう。
――訓練時間もまともに取れないような戦闘機に乗るのは嫌だということで、任官拒否や民間航空会社勤務の道を選ぶ人も増えていくのではないでしょうか。
杉江 今年の防衛大学卒業生のうち、1割を超える49人は任官拒否をしましたが、一説によると任官拒否の理由は、新防衛大綱における「専守防衛から敵地攻撃への転換」だといわれています。F35Aも敵地攻撃用ですから、極めて危険な任務を伴います。危険なことをやっても給料が低いと考えて民間企業へ行く人がいても、おかしくはありません。
そこで国土交通省は、一時は自粛していましたが、このパイロット不足時代において、自衛隊からの民間パイロットへの再就職を容易にする割愛制度を復活する方針を決めています。今はパイロットの取り合い合戦の時代です。
(構成=長井雄一朗/ライター)
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