東京都国分寺市のごみ出しルールが細かすぎるという困惑の声が、国分寺市に引っ越しをした人々から漏れ聞こえてくることがある。同じ東京都でも、ごみ出しのやり方は市区によってさまざま。特に多摩地区東部に位置する国分寺市のごみ出しのルールは、一際厳密に細分化されているのだ。
たとえば、東京23区は燃えるごみ、燃えないごみはすべて無料だが、国分寺市ではどちらも指定の専用ごみ袋を購入しなければならない。ほかにも、国分寺市独自のごみ出しルールが非常に細かく決められているのである。
そこで今回は、国分寺市役所の建設環境部 ごみ減量推進課 ごみ減量推進係に、なぜ国分寺市のごみ出しは細かいのかについて聞いた。
多摩地区のなかでもルールが厳しい国分寺市
まずは国分寺市のごみ出しの概要について説明しておこう。比較対象として、23区内の世田谷区を例に挙げながら紹介していきたい。
まず23区内の世田谷区は、燃えるごみも燃えないごみも、一般的に市販されているごみ袋を用意するだけでOK。指定の専用ごみ袋などは存在しない。一方、国分寺市では、燃えるごみ、燃えないごみは市が指定する有料のごみ袋を購入してごみ出しを行う必要がある。一例だが国分寺市指定の「もやせるごみ用」「もやせないごみ用」のごみ袋は、20リットルの袋が10枚400円といった具合だ。塵も積もれば山となるわけで、日々使うごみ袋が1枚40円かかるとなると、経済的負担に感じる方も少なくないだろう。
ただこれは国分寺市だけに限った話ではなく、八王子市など多摩地区の自治体は、燃えるごみ、燃えないごみ専用の指定ごみ袋を購入するルールとなっているところがほとんど。多摩地区に住むのであれば、ごみ出しのルールを確認し、市指定のごみ袋がある場合は購入しておく必要があるということだ。
次にごみの分別についても比較してみよう。世田谷区ではゴム・革製品・プラスティック(生鮮食品容器の発泡スチロール類含む)などを燃えるごみで普通に出せるが、国分寺市では「資源ごみ」で出すというルールになっている。
また、世田谷区では電池・電球・スプレー缶・ライター・蛍光管・電球・小型家電・刃物類は燃えないごみで出せるものの、国分寺市だと燃えないごみとは別に「有害ごみ」という区分で出す必要がある。
ちなみに国分寺市では資源ごみや有害ごみにまで有料の指定袋があるわけではなく、一般的な透明・半透明の袋でいいのだが、品目ごとに袋を分けて出すことを求められ、それぞれさらに細かい出し方も定められているのだ。
有害ごみも多摩地区のほとんどの自治体で見られる分別方法ではあるが、国分寺市はとりわけ細かいといえる。同じ多摩地区の八王子市だと刃物類と一部小型家電以外は、ひとつの袋にまとめて「有害ごみ」として出すことができる。しかし、国分寺市では、40cm未満の刃物類は、刃の部分を紙などで保護し、袋に「危険品」と書かなければいけない。そして、火災防止のためにスプレー缶、カセットガスボンベとライターは必ず別々の袋に入れる必要がある。そのほか、小型家電は個人情報を消去、電池系のごみはセロテープで絶縁、蛍光管・電球は作業員の負傷防止のため包み紙などに入れて保護しなければいけない。
そして、国分寺市では、新聞紙・段ボール・紙パック(中が白い物)は資源ごみで出せるが、一方で紙袋、書類、ティッシュの箱、菓子の箱などは「その他の紙」という区分で出す必要がある。出し方は有害ごみと同じく透明・半透明の袋に入れるか、ひもで縛るかの2択だ。また、燃えないごみやペットボトルの回収は2週間に1回、有害ごみの回収は月1回であり、「家の中にごみがたまってしまう」という困惑の声も聞かれる。
これだけ細かいルールがあると、守るのも一苦労だし、全住民がきちんとルールを順守してごみ出しをしているかどうか、気になるところである。
国分寺市役所ごみ減量推進係が語る納得の理由
国分寺市で燃えるごみ、燃えないごみの回収を有料化し始めたのはいつ頃なのか。
「国分寺市では、2013年から燃えるごみ、燃えないごみ袋の有料化を進めています。東京都ではかねてからごみ埋立地が寿命を迎えつつありましたので、焼却地でごみを処理できないかという議論が盛んでした。その流れに乗り国分寺市でも燃やせるごみとそうでないごみをしっかりと分別してもらうように動き始めたんです。
有料化以前は、指定ごみ袋はなく、各家庭の玄関先、集合住宅の前など建物ごとにごみを出してもらう戸別収集方式でごみを回収しておりました。しかし、分別が想定どおりに進まなかったので、よりごみの分別を促すべくごみ袋の有料化に踏み切ったのです」(国分寺市 ごみ減量推進課)
ごみ出しのルールもリサイクル、再資源化を推進していくために細分化していったのだという。
「基本的には汚れておらず再資源化、リサイクルができるごみは、市民の方々に分別してもらっています。特にプラスティックごみに関しては、2000年から完全施行した容器包装リサイクル法に則る形で分別をお願いしておりまして、ごみ削減のために処理に努めている品目です。『有害ごみ』や『その他の紙』などの品目も同様に、リサイクル、再資源化を行うため、回収業者に安全に運んでいただけるために市のほうで分別の指示をさせてもらっています」(同)
環境に配慮した取り組みだといえるが、国分寺市民はきちんと分別を行えているのだろうか。
「在住歴の長い市民の方は、市のごみ出しルールに慣れて積極的に分別を行っている場合が多いです。意識の高い方はマヨネーズのプラスティック容器を半分に切って、水で綺麗にすすいでから出してくれることもあります。
ただ国分寺市に来て日の浅い方は、ごみ出しのルールがよく把握できておらず、慣れるまで時間を要するようですね。国分寺市のごみ出しは、市が提供する『ごみ・リサイクルカレンダー』をもとにごみ出しをすることが推奨されています。これは1年間どの品目のごみをどの日にちに出すかをまとめたカレンダーとなっており、国分寺市のルールを順守していただく場合、基本的にカレンダーを見ないとどのごみを何曜日に出すべきかわかりません。国分寺市で生活するには必須のアイテムなんです」(同)
カレンダーは国分寺市で生きていくためには、マストのアイテムといえる。しかし、仮にごみ出しのルールがわからなくても、フォローできる体制は整っているとのこと。
「場合によっては、ごみ出しのルールが守れていない方の自宅に指導員が直接伺ってごみの分別の仕方、『有害ごみ』のまとめ方などをレクチャーしております。国分寺市としては、市民のみなさまの『わからない』をできるだけなくし、少しでもごみを減らせることにつながれば本望です。そして、こうした市民のみなさまと協力したごみの管理を通じて、埋立地の負担、燃やせるごみの量を減らし、かつリサイクルをどんどん推進していけば、自然環境に配慮したまちづくりができると考えております」(同)
国分寺市のごみ出しは確かにかなり複雑だが、そのルールの裏側には、自治体側の自然環境に配慮した熱心な思いが込められているのだ。
(取材・文=文月/A4studio)