服飾評論家でタレントのピーコ(78才)が軽度の認知症となり、万引きを繰り返して逮捕され、施設に入所していたと20日発売の「女性セブン」(小学館)が報じた。高齢者や認知症患者が増えるなか、もし身寄りのない高齢者が認知症となり一人で暮らしていくことがままならなくなった場合、どうなるのか。今の日本の実態について、専門家に話を聞いた。
1945年に双子の兄弟で映画評論家、おすぎの兄として生まれたピーコは、会社員を経て文化服装学院研専に入学。卒業後は双子のコンビ「おすぎとピーコ」として、1978年にラジオ番組『久米宏の土曜ワイド・ラジオTOKYO』(TBSラジオ)にレギュラー出演した頃から本格的に芸能活動をスタート。以降、数多くの情報番組やバラエティ番組などに出演し、『辛口ピーコのファッションチェック』という名物コーナーも生まれた。
2人は2015年からレギュラーのラジオ番組『おすぎとピーコのシスター・シスター』(KBCラジオ)で共演していたが、2020年に番組は終了。以降、メディアで2人の姿が見られる機会も減り、昨年5月発売の「女性セブン」は、ピーコは認知症となったおすぎを自宅で介護していたものの関係が悪化し、おすぎが高齢者施設に入居していると報道。ピーコは「女性セブン」の取材に対し「おすぎはもう死にました」と答え、世間を驚かせた。
そのピーコの動向が今月、再び注目されることに。「週刊女性プライム」が、ピーコが行方不明になっていると伝えたのだ。だが、その直後におすぎとピーコと所縁の深い爆笑問題がMCを務める情報番組『サンデージャポン』(TBS系)が、ピーコは現在、高齢者施設に入居していると報道。そして施設入居までの経緯を冒頭の「女性セブン」が伝えるかっこうとなった。
資産の有無が大きく左右
身寄りのない一人暮らしの高齢者が認知症となり、自力での生活が困難になった場合、一般的にはどのような対応がとられるケースが多いのか。一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表の鬼塚眞子氏はいう。
「お一人暮らしは、身寄りがあるかないか、資産があるかないかで大きく異なってきます。身寄りがあれば、子どもや孫に引き取られ、まったく身寄りがなくても資産が3000万円以上あれば、有料介護施設に入居されるケースが一般的です。この場合、施設は後見人の申請を行政と相談して行います。
以下、身寄りがなく、資産がそれほどないケースを前提にご説明させていただきます。近隣からの苦情などの通報がなければ、自ら動かない自治体がほとんどです。デイサービスに通っていれば、施設が行政に相談します。高齢者相談窓口を設けている自治体もあり、そうした部署や地域包括センター、場合によっては地域の民生委員の方が定期的に訪問して見守ることになります。また、見守り隊というような地域ボランティアが役割を担うケースもありますが、最終的には行政と提携するかたちとなります」
一人暮らしの高齢者が自身が認知症だと気づいた場合、どのような行動をとるべきなのか。
「一口に認知症といっても、軽度認知障害(MCI)などさまざまな種類があり、早く治療をすれば維持・改善が期待できます。いずれにせよ、介護保険の認定には医師の診断書が必要なので、絶対に自己判断をせず、かかりつけの病院に相談したり、脳神経外科などで診察してもらってください。そして認知症と診断されたら、介護保険の申請を行ってください」(同)
では、もし民間の高齢者施設の入居に必要となる資金がない場合、どのような対応がとられるのか。
「通常は行政が特別養護老人ホーム(特養)に入居させます。特養は申し込み順や認知症などの進行具合順での入居ですが、身寄りがなく病気が進行して近隣に迷惑がかかる場合は、緊急案件として優先順位は高くなります。その地域に施設がなければ、近隣に協力を求める場合もあります。ともかく早めの対応が重要です」(同)
(文=Business Journal編集部、協力=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)