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東京五輪メイン会場建設、迷走の舞台裏〜変動する建設費、負担配分めぐる国と都の綱引き

東京五輪メイン会場建設、迷走の舞台裏〜変動する建設費、負担配分めぐる国と都の綱引きの画像1国立競技場(「Wikipedia」より/LonelyPlanet)
 1300億円から3000億円に膨らみ、今度は1800億円に縮小。

 2020年に開催される東京五輪のメイン会場となる新国立競技場(東京・新宿)の建設費の予定額が、頻繁に変わっている。最大の理由は、競技場を運営する独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)や文部科学省が精密な試算を怠ってきたためだといわれている。新国立競技場は現在の建物を取り壊し、19年3月までに完成させる計画で進められている。デザインは、昨年7~11月に実施された国際コンペティションに応募した46作品の中から英建築事務所、ザハ・ハディド・アーキテクトのデザインが採用された。

 JSCは募集段階で建設費を1300億円としていた。7万2000人収容の日産スタジアム(神奈川・横浜市)の総工費600億円に、開閉式屋根の取り付け経費などを加えてはじき出されたものだった。

 しかし、東京五輪の開催決定を受けて事態は一変する。開催が決定した後、JSCが業者に委託して試算し直したところ、建設費は最大3000億円に膨らんだ。流線形のアーチで開閉式の屋根を支える斬新なデザインを採用。延べ床面積を12年のロンドン五輪の主会場の3倍近い29万平方メートルとしたことで総工費がかさんだ。

 建設費が当初の見込みを大きく上回る額に膨らんだため、JSCは設計事務所側の了解を得ながら規模縮小を余儀なくされた。競技場を取り巻くように配置された流線形の立体通路を縮小し、延べ床面積を当初計画から25%削減して22万平方メートルに抑えることによって、総工費は1800億円になると試算した。それでも当初の見込み額の1.4倍、ロンドン五輪の競技場建設費の2倍だ。

 JSCは11月26日、新競技場の基本設計の条件案を公表した。それによると本体工事費1413億円、周辺整備費372億円の合計1785億円と見積もられており、これで1800億円をわずかに下回ることになる。床面積25%削減の内訳は、(1)スポーツ博物館、レストランなどの商業施設、VIP席やボックスシートなどの関連施設の縮小、(2)900台収容だった駐車場を600台に減らす、などだ。一方、8万人収容の観客席や9レーンのトラックなどは当初計画通り維持した。建設費に加えて維持費の高さが指摘された開閉式屋根は検討課題としたが、スポーツ以外の利用を前提にすれば開閉式のままになる。

●国と都のつばぜり合い

 そんな中、猪瀬直樹・東京都知事は11月8日の定例記者会見で、新国立競技場の建設費が全体で1852億円になるとの文科省の試算を公表した。内訳は競技場本体が1480億円、周辺整備が372億円(サブトラック連絡通路30億円、人工地盤266億円、都営大江戸線との接続11億円など)となっている。

 工事費の負担をめぐり、国と都がつばぜり合いを繰り広げている。厳しい財政事情を抱える国は、五輪後も競技場などの施設を活用できる都に対して「協力してもらう」(下村博文文科相・五輪担当相)と総工費の一部負担を要請。対して都は、競技場は「国立」のため、本体工事については「国が全額負担するのが建前」(猪瀬都知事)と突っぱねている。最終的には、本体工事は国が負担し、周辺部分の整備については都も一部負担するというかたちが着地点となるだろうとみられている。

●景観保全の観点から反対運動も

BusinessJournal編集部

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