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「大谷翔平が『大金を送信した』と発言」報道…刑事責任の可能性も、米国で批判

文=Business Journal編集部
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(「Wikipedia」より/Moto “Club4AG” Miwa)

 米大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の元通訳、水原一平氏が違法賭博を行っていたとして球団から解雇された問題。水原氏は自身が大谷のパソコンにログインして大谷の銀行口座から勝手に違法ブックメーカーに送金し、大谷はその事実を一切知らなかったと主張しているが、水原氏と大谷の広報担当者は米メディアの取材に対し当初、水原氏が賭博でつくった450万ドルの借金を大谷が肩代わりして支払ったと回答。さらに大谷の広報担当者は「大谷は『何度か大金の送信をしました。送れる最大限度額でした』と言った」とコメントしていることから、米国では水原氏と大谷側の主張に疑問が拡大。また、もし仮に当初の証言どおり大谷自身がブックメーカーに送金していたとすれば大谷も刑事責任を問われる可能性もあり、米国のメディアやSNS上では大谷に批判的な声も広まっているようだ。

 事の発端は、FBI(米国連邦捜査局)が元ドジャース選手の違法賭博事件への関与を捜査していたなかで、調査を受けたブックメーカーのマシュー・ボウヤー氏へ大谷の口座から送金がなされた記録が見つかったことだった。米メディア「ESPN」は大谷の代理人に、大谷からボウヤー氏への送金記録があることについて問い合わせ、大谷の広報担当者は、水原氏が賭博でつくった450万ドルの借金を大谷が肩代わりして支払ったとしたうえで、「大谷は『何度か大金の送信をしました。送れる最大限度額でした』と言った」と回答。19日、水原氏はESPNの取材に応じ、ボウヤー氏が関与するブックメーカーで賭博をするようになり借金が膨らみ、23年には借金が400万ドル(約6億円)に膨らみ、返済苦に陥り友人などから借金を重ねていたと説明。その上で以下主旨のコメントをした。

「生活はギリギリでやりくりが大変だった」

「大谷の信用を失うのが怖かった」

「大谷には言えなかった。生活苦だった。支払いから支払いの綱渡り。彼のライフスタイルとも合わせなければならなかったからだ。でも、同時に彼には話したくなかった」

「借金の返済を大谷に依頼した」

「大谷はよく思っていなかったが、二度とやらないように私を助けてくれると支払ってくれた。大谷は賭博には一切関与してないことをわかってほしいし、私もこの賭博が違法だとは知らなかった」

「大谷が自分のパソコンから複数回に分けて送金した」

(大谷が送金相手が違法なブックメーカーだと認識していたのかについて)「大谷は何も知らなかった。私はただ、借金を返済するために電信で送る必要があると言っただけです。彼はそれが違法かどうかは訊いてこなかった」

 大谷は自身の口座から「ローン」という名目で数カ月にわたり1回あたり約50万ドル(約7600万円)で8~9回ほどに分けて送金したと水原氏は説明した。

 だが、翌20日になって大谷の広報担当者はESPNに対し、大谷は水原氏の賭博や借金について一切把握しておらず、水原氏は虚偽の内容を話していたとして、水原氏へのインタビューを報道しないよう要請。さらに球団側から事情を聞かれた水原はESPNに連絡し、インタビューで証言した内容を撤回。大谷は水原氏の賭博による借金については把握しておらず、送金もしていないと証言。同日中には大谷の代理人弁護士が「大谷が大規模な窃盗の被害に遭っていることが判明した」とする声明を発表。その直後に水原氏は球団を解雇され、大谷の広報担当も大谷は水原氏の賭博や借金、送金の件を知らなかったと主張している。

「この説明の信憑性は、疑問視されている」

 すでに米メジャーリーグベースボール(MLB)が正式な調査に着手しており、米国の内国歳入庁(IRS)も捜査を開始。大谷の代理人も米国の捜査当局に刑事告訴しているため、今後、詳細な経緯が明らかになるとみられるが、注目されるのが大谷への影響だ。米国では約40の州でスポーツ賭博が合法化されているが、大谷と水原氏が住むカリフォルニア州では違法。また、MLBは選手やスタッフによる野球への賭博を禁止している一方、その他の競技については合法な賭博であれば認めている。水原氏は野球の賭博は行っていないと主張している。

 水原氏が関与していたブックメーカーは違法業者とみられており、21日付ロサンゼルス・タイムズ記事によれば、もし仮に大谷が水原氏の代わりにこの事業者への借金を返済していた場合、違法な賭博事業者の債権回収に関与していたことになり、最低1年間の出場停止処分を受ける可能性があるという。

 また、もし仮に大谷が広報担当者と水原氏の当初の証言どおり自身で送金しており、さらに大谷が水原氏から送金相手が違法賭博業者である旨を聞いていた場合、大谷が刑事責任を問われる可能性もある。

 ドジャースの幹部は20日の試合後に全選手に向けて、水原氏が賭博で借金をつくり、大谷がそれを肩代わりして支払ったと説明していたとも報じられており(米紙ニューヨーク・ポストより)、米国メディアでは大谷に批判的な報道も目立ち始めている。

 たとえばロサンゼルス・タイムズ紙は、水原氏が勝手に送金したとの証言について「この説明の信憑性は、その後の暴露のために現在疑問視されている」として、「彼(=大谷)の沈黙が憶測に拍車をかけている」と指摘。USAトゥデイ紙は昨年まで大谷がプレーしていたロサンゼルス・エンゼルスの関係者の「大谷がまったく知らなかったと信じるのは難しい。どうすれば大谷が違法賭博の疑惑のかかる胴元へ50万ドルの送金が複数回もあったことに気が付かないという可能性があるのだろうか」というコメントを伝えている。

米国の世論

 米国の大学に留学経験がある外資系企業社員はいう。

「米国では日本ほど大谷はヒーロー扱いされているわけではないので、SNSでも水原氏が勝手に送金していたというストーリーを怪しむ声や、水原氏が大谷の身代わりになっているのではないかという声まで出ている。日本人が考える以上に大谷への世論の風当たりは厳しいものになるのでは。米国ではアジア人は冷たい対応をされることも珍しくなく、そういう米国に根深く残るアジア人への見方もバックグラウンドとしては影響してくる」

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は次のように解説する。

「一平さんが大谷さんの金銭を勝手に使った、送金された、違法な賭博をやった、といった報道がありますが、まだまだ不確かなところがあるので、今後、アメリカ国内でどのような捜査がなされ、何罪で逮捕・起訴されるかはまったくわかりません。日本の刑法は、『日本人が、海外で窃盗や横領をした場合も、日本の刑法を適用する(罰する)』と定めているので、もし、一平さんになんらかの財産犯が成立するなら、日本において逮捕・起訴があり得ます。しかし、外国で逮捕・起訴され、受刑したような場合、その後、帰国後に日本でも処罰されることはされるのですが、たいていの場合、減刑されたり免除されたりします。このため、『どうせ減刑、免除される』として、警察や検察はそもそも逮捕・起訴しない場合が多いといわれています」(3月22日付当サイト記事より)

 米メディア「NBCロサンゼルス」は、水原氏が米カリフォルニア大リバーサイド校を卒業したという学歴詐称を行っていたとも報じているが、弁護士はいう。

「証言が二転三転しているうえに学歴詐称も重なり、米国の捜査当局は水原氏の証言の信憑性は低いと判断するので、水原氏が違法だという認識を持たずに賭博をしていたという主張は認められづらい。一方、もし仮に大谷自身が送金していたとしても、水原氏は『大谷に無断で大谷の口座から送金した』という窃盗の罪にまで問われるような証言をしており、加えて水原氏と大谷側の証言が一致しているので、大谷が送金していたと認定がされる可能性は低い。よって、大谷が罪に問われるという展開になる可能性は低いと考えられるものの、米国の世論的には『本当に大谷は何も知らなかったのか』という疑いの目は残るだろうし、もし今シーズンの成績が悪ければ、大谷はかなり厳しい声に晒されることになるかもしれない」

二段階の認証を突破

 大谷サイドと水原氏が説明するストーリーに疑問が向けられる要因になっているのが、約6億8000万円ものお金を口座所有者の知らないうち第三者が勝手に送金するということが現実的に可能なのかという点だ。水島氏は数カ月にわたり、大谷の口座から1回あたり約50万ドルで8~9回ほどに分けて送金されたとされる。

 たとえば日本の銀行のネットバンキングでPCを使って振り込みを行う場合の一般的な手順をみてみると、まず銀行の専用サイト上で店番号・口座番号・ログイン用パスワードを入力してログインし、振込先の金融機関名・支店名・口座番号・金額を入力。さらにスマートフォンなど別端末の専用アプリに表示されるワンタイムパスワードを入力し、振り込みを実行。設定によっては口座所有者に対し、振り込み完了を通知するメールが送信される。銀行によって細かい違いはあるものの、二段階でパスワード認証が設けられているケースが一般的だ。

 もし使われた大谷の口座が日本の銀行のものであった場合、水原氏は二段階の認証を突破し、さらに振込のたびに大谷にメールで完了通知が届いていた可能性があるものの大谷は気がつかず、さらに数カ月もの間、億単位の金額が減っていることに大谷は気がつかなかったということになる。

 ITジャーナリストの三上洋氏はいう。

「PCを使って送金にするには、ネットバンキングのIDとパスワードに加え、認証アプリで生成されるワンタイムパスワードやSMS、古いタイプでは電卓型のトークンなどの二段階認証を通過しなければならず、大谷選手の個人スマホが必ず必要になります。つまり、水原氏は大谷選手のネットバンキングのIDとパスワードを知った上で、大谷選手のスマホを物理的に持ち、そのスマホのロックを解除するというすべての段階をクリアしなければ送金できません。一回だけならまだしも、数カ月の間で複数回にわたって大谷選手に隠れてこの行為を続けることは困難です。

 唯一可能になるのは、すべてを水原氏が管理していた場合です。ネットバンキングのIDとパスワード、メール、大谷選手の個人スマホのロック解除コードをすべて水原氏が管理し、スマホの指紋認証や顔認証も水原氏の指紋と顔で登録し、大谷選手の個人資産管理をすべて水原氏が行っていたとすれば、不可能ではないかもしれません。ただ、このような完全代行は高齢者などスマホを一切使えない人ぐらいしか考えられず、海外を飛び回る大谷選手が水原氏に完全に管理を任せていたというのは考えにくいです。

 以上を踏まえると、当初水原氏がESPNの取材に対し説明してたように、大谷選手が水原氏をお金の面で信用していなかったために水原氏にお金を渡さず、PCを前にして大谷選手が水原氏同席の上で送金したという話のほうが現実味があります。『大谷選手は知らなかった』というのは、非常に特殊な例を除けば現実的ではありません。

 ただし、水原氏と大谷選手側の証言が食い違っているのならまだしも、両者の証言は一致しているので、水原氏の同席の上で大谷選手が送金したということを捜査当局が立証するのは困難です。両者ともに『水原氏が大谷に隠れて勝手に送金した』と言っている以上、捜査当局はその線で立件することになるのかもしれません」

選手としてのパフォーマンスへの影響

 気になるのが大谷へのプレーへの影響だ。スポーツ紙記者はいう。

「大谷にとって水原氏の存在は一通訳という範疇を完全に超えたもの。水原氏は大谷の練習パートナーとして練習中やトレーニング中、常に大谷のそばにつき、スマホやタブレットを駆使して情報を分析して伝えたり、投球練習ではバッター役やキャッチャー役を務めてあれこれ伝えていた。グラウンドを離れても、運転手や買い出し役をこなし、毎日のように夕食をともにし、米国では夜に外を出歩くことも難しいため一緒に過ごすことも多かった。毎年オフシーズンに大谷が帰国して日本でトレーニングをする際にも常に水原氏も帯同しており、大谷にとっては公私ともに水原氏は欠かせない存在。特に練習で水原氏のサポートを受けられないということになれば、プレーのパフォーマンスに影響が出るのは避けられないだろう」

(文=Business Journal編集部)

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