徳島県教育委員会が8億円かけて県立高校などに配布した1万6500台の中国製タブレット。その半数以上がバッテリー膨張などで故障するという事態が発生している問題で、納入した四電工は先月29日、原因調査の報告書を発表し、故障の原因は製品不良ではなく、学校内での保管環境にあったと考えられるとした。多額の税金が無駄になってしまった今回の事態。県教育委員会の対応や学校側の管理に問題はなかったのか。関係者の見解を交え追ってみたい。
徳島県教育委員会が購入したのは中国メーカー・Chuwiの「UBook」。県内の県立高校などに配布され2021年から使用されていたが、昨年夏頃から故障が頻発し、11月には故障台数が6000台以上に上った。徳島県は11月に可決された補正予算で6500台の代替機を調達する費用として7200万円を計上し、四電工も3500台を無償付与するなどして不足分を補充した。
県教育委員会の対応は杜撰(ずさん)だった。昨年7月には故障の増加を把握していたものの、県に報告を行わず、代替機確保のための予算確保の動きが遅れた。また、消費者安全法では消費者に被害が生じる事故が起きた場合に自治体は消費者庁へ通知をしなければならないと義務付けられているが、21年に県立中学校でChuwiの端末が焼け焦げたような状態になる事態が生じた際に、県教育委員会は当時消費者庁へ通知を行っていなかったことも判明した(23年11月に連絡)。
保管環境が原因
県議会ではChuwiと四電工への批判や損害賠償を求めるべきとの声があがり、後藤田正純知事は四電工に対して損害賠償請求などの法的措置を検討することを示唆。そうしたなかで発表されたのが、四電工による調査報告書だ。
同社は外部の検査会社に検査を依頼した結果として、バッテリー膨張は製品の不良ではないと報告。故障したUBookを調査したところ、バッテリー内部の電解液がガス化していたとして、次のように記述している。
<電解液のガス化は、使用環境や保管環境で大きく促進されるため、保管環境(夏休み、冬休みなどの休校の為、空調管理がされていない状態の充電や、直射日光があたる状態での充電)などの加速因子が重なったことで、発生したと推察された。」と考察しています>
加えて、校内の端末の充電保管庫で充電タイマーが外され、適切に機能していないと考えられる状態にあるケースも確認され、端末の持ち帰りを行っていない学校では膨張率が顕著に高い傾向にあることが認められたという。
一般的にスマートフォンやタブレットで使用されるリチウムイオン電池は極端な高温下や低温下で使用・充電すると動作が変化したりバッテリーの持ちが悪くなる、つまりバッテリー性能が劣化する。たとえばアップルはiPhoneやiPadなどの動作温度を0~35℃に設定しており、この温度を超える場所で使用すると動作が変化したりバッテリーの持ちが悪くなるとしている。暑い場所や直射日光下で特定の機能を長時間使い続けると以下のような変化が生じる懸念があるとしている。
「・充電 (ワイヤレス充電も含む) が遅くなる、停止する。
・ディスプレイが暗くなる、またはディスプレイに何も表示されなくなる。
・携帯電話無線が低電力モードになる。この間、電波が弱くなることがあります。
・カメラのフラッシュが一時的に無効になる。
・グラフィックを多用する App や機能、拡張現実対応の App や機能でパフォーマンスが低下する」(同社HPより)
教育現場、保管に気を配る余裕ない
中学校教師はいう。
「現場の先生たちはとにかく忙しいので、いちいち生徒たちが使う端末の保管状況や充電環境に気を配っている暇はない。休日や長期休暇の間は使っていない施設の空調は入れないため、夏場に蒸し風呂状態のロッカーや充電場所に長時間放置されるといったことは十分起こり得るし、それが端末の故障原因になるのではないかと気にする先生が多いとは思えない。“買った後”のことを考えずに、お役所仕事的に、なんとなく時流や他県の動きをみて『ウチの県もタブレット配布をやっておこう』と安易に考えた結果だろう」
今回の四電工の発表について、ある都道府県職員はいう。
「『なぜ国内で販売実績の乏しい中華製タブレットを買ったのか』という声もみられるが、県の予算が最初から決まっていたので、それしか選択肢がなかったということだろう。四電工としては県の予算が限られたなかで端末の調達を迫られたこともあり、大して利幅は大きくなかっただろうし、すでに故障を受けて3500台を無償貸与しているので、これ以上損を出すわけにはいかない。また、学校側の保管が杜撰だったのが原因なのに、損害賠償まで請求されてはたまったものではない。毅然とした対応に出るのは民間企業としては当然のこと。県の教育委員会がどこまで学校に対して保管方法についてきちんと指示していたのかは微妙なところで、学校側も端末の保管にまで気を使ってはいられないだろうから、県教育委員会の責任が問われるという展開になるのでは。
もっとも、県は今回、1台あたり約4万8000円で購入したことになるが、外資系メーカーでも日本メーカーでも教育機関向けにはかなり安価な価格で端末を提供しているケースも多く、これくらいの金額であればメジャーな大手メーカーでも手を挙げるところはあるはず。県と四電工が機種の選定にあたって入念に検討したり、メーカーときちんと交渉したのかが疑問」
(文=Business Journal編集部)