DNAの情報量は、30億ペア(塩基対)あります。ATGCの4つの情報を表すには2ビットあれば十分ですので、単純に最低60億ビットほどの情報量で、人のDNAマップは網羅できます。すごい情報量と思われるかもしれませんが、8ビットが1バイトですので、0.75GB(ギガバイト)、すなわち2時間映画のDVDの1/5程度です。
このうち、一部のDNAが複数連なり、タンパク質等をつくる設計図となっています。これが遺伝子です。遺伝子は、2万部位程度が見つかっていますが、それを構成しているのはDNA全体の3%程度です。あとの97%は「ジャンクDNA」などとひどい言われ方をされていますが、最近の研究では有用な機能があると考えられるようになっています(http://ja.wikipedia.org/wiki/ジャンクDNA)。
このDNAの塩基列は、糸巻きのようにグルグル巻きになって、XやYのような形として46本、23対でまとめられています。これが染色体です。このうちの一つが性別を決定する性染色体で、その形から”XY”とか”XX”とか言われているものです。なぜ、こんな形になっているかというと、細胞分裂や減数分裂の際に、DNAを切ったり、くっつけたりするのに、色々と都合がよいからです。
さて、60兆個ある細胞は、受精した時にはたった一つの細胞ですが、これが「分化」していくことによって、まったく違う性質の大量の細胞に変化していきます。大まかに説明すると、下記のように分化していきます(「胚」ではなく、「受精卵」で表記統一します)。
簡単にいうと、人間と細胞は同じです。生まれたばかりの赤ちゃんには無限の可能性(多機能性)がありますが、年齢を経るにつれて、文系/理系、職種の選択などで、私たちの可能性が失われ(単機能性)、それを元に戻すことはできないという性質(不可逆性)があるということです。
ともあれ、受精卵から皮膚の細胞へ変化できても、皮膚の細胞から受精卵への変化は、絶対にできない――これが細胞学の常識だったのです。