しかし、この間に世界では産業用燃料電池(以下、産業用電池)の開発が着々と進行、米国ではすでに普及が始まっている。燃料電池開発の優先順位を誤ったわが国は、2018年〜20年に訪れるといわれている家庭用電池市場の本格成長期に(後述参照)、世界の草刈り場にされる可能性も出てきている。
このほど、燃料電池普及促進協会が、今年度の家庭用電池・エネファームの補助金申請受付を、6月7日に終了していたことがわかった。昨年度を超えるスピードで申請が殺到し、今年度予算分の約1万2300台、総額90億円が、わずか2カ月あまりで埋まったからだった。
エネファーム人気の背景
「値段も図体もデカイだけの給湯器」といわれているエネファームにここまで人気が高まったのは、東日本大震災とその後の「電力不足キャンペーン」がきっかけだ。住宅業界が中心になって宣伝に努めている「停電も怖くない家・スマートハウス」の「創エネ」の目玉として、太陽光発電装置と共にエネファームの販促に力を入れた結果といえる。販売台数の伸びが、それを示している。
ガスエネルギー新聞の調べによると、09年6月に「世界初」と鳴り物入りで発売されたエネファームの販売台数は、09年度が3907台、翌年の10年度が5829台だった。それが、11年度は1万1875台と、一気に前年度比2倍に跳ね上がった。そして、今年度は前年度比43%増の1万7061台の見込み。今年度見込みを含めた累計販売台数は、3万8672台になる。
だが「エネファームが売れている」とハウスメーカー関係者が盛り上がっても、約80万戸といわれる近年の新設住宅着工件数と比べると、今年度見込み分でも2%程度の装備率でしかない。現状では「環境意識の高い富裕層のステータスシンボル」(エネルギー関係者)的な導入で終わっている。
高コスト、停電時は使用不可
その理由は、「商品として未完成」(エネルギー関係者)だからといわれる。
まず価格が高すぎる点だ。09年当初の300万円台と比べれば価格が低下したとはい
え、例えば大阪ガスなど5社が共同開発した最新型の「エネファームtype S」は、275万円もする。仮に今年度の補助金上限70万円を獲得したとしても、やはり一般家庭が購入できる設備ではない。
加えて、エネファームは停電時に使用できない点を知って、購入をあきらめる客も多いという。しかもその理由は、技術的なことではなく、大手電力会社の都合にある。「停電時に使えないのでは、なんのための電源かわからない」と言われるのも当然だ。
こんな日本をよそに、海外では家庭用電池ではなく、産業用電池が市場の主流になりつつある。