さらに、村田学長によると「そもそも、欧米の大学人は、このランキングをあまり気にしていない」という。ランキングを気にするかしないかはともかく、日本の大学が国際競争力を高めなくてはならない、という指摘に反論する人はほとんどいないだろう。村田学長も同志社大学のグローバル化を積極的に推進している。その取り組みが評価され、文部科学省の「国際化拠点整備事業(大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業)【通称:グローバル30】」に採択された。ちなみに、同事業に選ばれたのは、同志社大学と、東北大学、筑波大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学、慶應義塾大学、上智大学、明治大学、早稲田大学、立命館大学の計13大学である。
●オリジナリティを再認識した改革
同志社大学は、他の12大学と同じような施策でグローバル化しようとしているのだろうか。答はノーである。村田学長が強調したいのは、同志社大学らしいオリジナリティを再認識した改革の実現だ。
では、同志社大学らしさとは何か。同志社は明治8年に同志社英学校として創設されて以来、「良心教育」を建学の精神とし、「キリスト教主義」「自由主義」「国際主義」を教育理念に掲げている。中でも、「国際主義」の歴史は古い。そもそも、同志社は、「グローバル化」が叫ばれるよりはるか前から国際主義を標榜してきた。欧米の学問を英語で教える英学校として誕生した歴史からすれば不思議ではないが、1920年から28年にかけて第8代目総長を務めた海老名弾正が「国際化」という概念を重要視していた。当時としては斬新な言葉であり、すでに今でいうところのグローバル化を意味する。
このように、同志社大学にはグローバル化の伝統はあっても、他大学と差別化できるほど、その資源を生かしていたかというと疑問である。そこで同志社大学は、「世界大学ランキングや偏差値で単純に比較される普通の大学(学校)からの脱皮を目指している。具体像は、グローバル志向のリベラルアーツカレッジ(グローバル感覚に溢れる教養重視大学)である。言い換えれば、平成版「同志社英学校」に変身しようとしているようだ。
日本人はアメリカの大学と聞けば、ハーバードやスタンフォードのような総合大学しか頭に思い浮かばないようだが、新島襄が卒業したアーモスト(アマースト)大学をはじめとする大学院を持たない小規模な名門リベラルアーツカレッジが多数存在する。これらの大学の卒業生の多くが、有名大学院に進学し、アメリカ社会のリーダーとして活躍している。
同志社大学はここ数年で、グローバル系の学部(グローバル・コミュニケーション学部、グローバル地域文化学部)や大学院(グローバル・スタディーズ研究科、ビジネス研究科グローバル経営研究専攻)を相次いで新設した。さらに、小学校から高校までの一貫教育においても、グローバル化を加速している。帰国生徒と国内一般生徒の共習を前提にした国際中学校・高校、そして、文部科学省から教育課程特例校の指定を受け、6年間の総授業時間数の約55%を英語で行う日英バイリンガルスクール(同志社国際学院初等部)、世界中から集まった子ども達が国際標準化されたカリキュラムで学ぶインターナショナルスクール(国際学院国際部)の開設などである。
これらの大きな動きに加えて、同志社大学は小さな工夫も凝らしている。例えば、英語の得意な学生と英語が苦手な学生双方のグローバル化である。