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同志社大学、脱「普通の大学」目指すユニークなグローバル戦略 3つの経営資源を活用

長田貴仁/神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー、岡山商科大学経営学部教授
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 グローバル化は、すなわち、英語を流暢に話せるようになること、と思われがちである。たしかに、同志社大学はその点をさらに強化しようとしている。例えば、全学の5%の学生を対象に、英語だけで講義を行う学部横断型コースの設置がその一つ。全学部とも在学中に提携大学に留学する制度は充実しているが、京都にいる間も留学と同様の環境で学ぶことができる。

 ユニークなのは、英語が苦手な学生のグローバル化だ。英語ができない人はグローバル人材ではない、という既成概念を取り払おうという試みである。英語が得意と思われている同志社大学の学生の中にも、英語は苦手だが、日本語の議論なら負けないというつわものが少なくない。そのようなたくましい学生を集めて、日本語を学びに来ている留学生を相手にディスカッションやディベイトをする講義を設ける。英語はジャパニーズ・イングリッシュだが、内容で勝つぞ、と思っている学生のやる気に火をつける作戦だ。

 これは、なかなかおもしろい案である。なぜなら、英語を公用語にする日本企業が注目されているが、予想以上に早く自動機械翻訳技術が進化し、電卓で計算するがごとく、スマートフォンなどの情報機器に向かって話せば自動的に同時通訳してくれる時代がやってくるかもしれない。そのような時代になっても、英語を使ったヒューマン・コミュニケーションは重んじられるだろうが、外国語よりも内容で勝負したいという人にとっては、英語能力よりも議論する力と教養、専門性のほうが重要になってくるのではないだろうか。そのような未来を想定すれば、同志社の講義は新時代を見据えたグローバル教育といえる。

●同志社大学の3つの経営資源

 さて、企業で言う「経営資源」という観点から同志社大学を見てみると、村田学長が挙げる次の3点に集約される。

(1)京都に位置している。
(2)創立者(新島襄)の教育理念が生き続けている私学である。
(3)キリスト教主義の学園である。

(1)については、日本人が日本の魅力を自覚することがグローバル人材の前提であるとすれば、京都はそれに最も適した街である。一方、外国人から見ても、学ぶため、研究するために住んでみたい魅力的な日本の都市が京都であろう。同志社が外国人教員募集の公募を出すと、世界中から驚くほど著名な研究者が応募してくる。留学生にとっても人気大学の一つである。

(2)も、これからの時代のグローバル化を考えると非常に重要である。なぜなら、グローバル化がますます国レベルから民レベルへ広がりをみせているからだ。明治政府がいわゆる「和魂洋才」で、日本の近代化のために西洋の技術や制度だけを模倣しようとした折に、新島襄は西洋の技術や制度を支える市民社会の重要性を訴え、その市民社会を構成する賢明で自立的な市民、つまり「良心を手腕に運用する人物」を育成しようとした。まさに、この概念は、これからのグローバル化、とくにビジネスで重要な要素になることだろう。

(3)も、極めて現代的意義のある資質である。同志社大学は上智大学、青山学院大学のようなバックに教会が存在する「ミッションスクール」ではなく、新島襄という敬虔なキリスト教徒により設立された「キリスト教主義大学」である。したがって、キリスト教の信仰を強いることはまったくない。神学部でさえ、キリスト教徒以外の学生が大半である。しかし、入学式や卒業式にとどまらず、日常的に讃美歌やお祈りを耳にし、キリスト教(文化圏)に詳しい教授から、その考え方を学ぶことによりグローバル感覚が自然と身につく。

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