オバマ大統領の評価を著しく低下させている原因の一つに外交政策がある。その外交政策は、財政の立て直しを重視し、国内経済に軸足を置いた基本政策のもと、単独での軍事力行使を最小限にとどめる「ミニマリスト外交」と呼ばれている。
このミニマリスト外交が、同盟国を含めた世界的な地政学上の不安定化を招いているとの批判を浴びている。事実、ここのところウクライナ問題、イスラエル問題など平和を脅かす情勢が続いている。
加えて、オバマ大統領を窮地に追い込む問題が表面化した。それは、2012年9月11日にリビア・ベンガジの米国総領事館が受けたテロ攻撃についてだ。このテロ攻撃では、総領事以下2人が殺害され、その2日後にはベンガジに派遣されていたCIA関係者も2人殺害されている。
この攻撃について当時の米政府は、「反イスラム派によるインターネット上での呼びかけに触発された自然発生的な攻撃」との見解を発表したが、今年に入り事態は急変した。ベンガジ事件が発生する18時間前の12年9月10日、イスラム派テロ組織アル・カイーダの指導者アル・ザワヒリがビデオで、同年5月にパキスタンで米国の攻撃により殺害されたアル・リビの復讐として、リビアにいる米国人への攻撃を呼びかけていたことが明らかになり、ホワイトハウスは総領事館の危機を知っていたにもかかわらず対応が遅れ、総領事以下の人命が犠牲になったのではないか、との批判が湧き上がった。これに対して、共和党を中心とする米下院は、この問題に関する調査委員会を設置した。
●ヒラリー・クリントン陣営から暴露本
しかし、オバマ大統領の危機は、これだけでは終わらなかった。むしろ、最大の危機はその後に訪れた。
14年6月23日、『血の確執(Blood Feud)』(エドワード・クレイン)という本が出版された。この本は、ヒラリー・クリントン元国務長官のチーフスタッフであったシェリル・ミルズを中心とした情報源により取材されたもので、この中でベンガジ事件の裏側について暴露している。同書によると、総領事が殺害された12年9月11日の午後10時、アル・カイーダと関係するイスラム武装組織アンサール・アル・シャリアが事前に計画し、重武装した攻撃を総領事館に行い、総領事を殺害したという詳細な報告をクリントン国務長官が受けたという。
その上、この報告についてオバマ大統領がクリントン国務長官に直々に電話をして、事件の原因は「(イスラム教の開祖)マホメットを中傷するビデオに対する自発的な抗議活動であった」と発表するように命令した、と明らかにしている。