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自民党、異例の選挙報道要望書は「脅し」か テレビ局で広がる委縮、調査報道の妨げに

文=編集部、協力=水島宏明/法政大学社会学部教授
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自民党、異例の選挙報道要望書は「脅し」か テレビ局で広がる委縮、調査報道の妨げにの画像111月18日、記者会見を行う安倍晋三首相(「首相官邸HP」より)
 自民党がNHK及び在京民放テレビ局に対し、衆議院解散前日の11月20日付で「選挙報道の公平中立」などを求める要望書を渡していたことが判明し、波紋を呼んでいる。その内容は「出演者の発言回数や時間」「ゲスト出演者の選定」「テーマ選び」「街頭インタビューや資料映像の使い方」など詳細にわたる「異例のもの」(テレビ局関係者)で、編集権への介入に該当する懸念も指摘されている。

 そのような中、当初は各党議員と政治家以外のパネリスト数人が討論するという構成であった討論番組『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系/11月29日放送)が、放送日直前に議員のみの出演に変更されていたことが明らかとなった。出演予定者だった評論家の荻上チキ氏のTwitterによれば、放送日2日前の27日に番組スタッフから電話があり、「ゲストの質問によっては中立・公平性を担保できなくなるかもしれない」との理由で議員のみの出演に変えると伝えられたという。

「番組スタッフに『誰かが何か言ってきたりしたんですか?』と確認しましたが、あくまで局の方針と番組制作側の方針が一致しなかったため、とのことでした。番組スタッフも戸惑っていた模様です」(荻上氏のTwitterより)

 自民党の要望が早くもテレビ局の番組制作に影響を与えている様子がうかがえるが、元日本テレビ『NNNドキュメント』ディレクターで法政大学社会学部教授(メディア論)の水島宏明氏はまず、『公正中立な報道』に関する誤解について次のように解説する。

「今回の要望書は、テレビ局を萎縮させる効果を狙った『脅し』以外の何物でもない。実際に萎縮しているという声を番組制作現場から聞く。街頭インタビューを含めて、『客観的で公正中立な報道』などテレビでは実現できない。インタビュー対象者の選定や発言のどの部分を使用するかという判断を含めて、制作者側の意思が入り込むからだ。テレビ局ができることは、可能な限り多角的な意見を伝えるよう努めることぐらい。テレビ報道の役割として、選挙報道ではできるだけ争点や政策に関して問題点や疑問点を示していくことが大切であり、現状の問題点を扱うため与党・現政権に批判的にならざるを得ない」

●調査報道を妨げる懸念も

 水島氏は、こうした「報道側と権力側の社会における役割分担」に関する基本理解がないのが安倍晋三政権だと批判し、さらに要望書によりテレビが調査報道を妨げられることで、有権者に選挙の争点が十分に伝わらない懸念を指摘する。

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