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闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第25回

三井住友銀行、認知症女性に執拗な投資勧誘で2千万円の損害与える 虚偽の社内資料作成

文=佐々木奎一/ジャーナリスト
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 それは、三井住友銀行内部で作成している「コンタクト履歴」という書類に見られた。そこにはAさんが認知症であるにもかかわらず、明晰に話しているかのように記載されている。例えば、行員が「いいものがありますよ」と勧めると、Aさんは「兄と一緒に聞きます」と答えるといった具合だ。ほかにも、次のような記述が見られる。

「兄も売ると言っていますので、私もここで売ります。よろしくお願いします」
「私も兄と相談しながら、同じもので運用したい」
「(目論見書を)よく読んでおきます」
「はい、兄と同じように投資させてもらいます」
「私はいつも兄と同じ取引をしているのです。いつも相談しているのでね。預金で置いていても取り崩していくばかりで意味がないので、投信で運用しているのです。発展途上国より先進国で運用しているファンドで運用したほうがいいかもしれません」
「では、私もピムコ(※金融商品)を売却して、もう一度グローバルREITを購入しましょう」

 Bさんによると、この履歴の中にはAさんがデイサービスに行っていた時間に、自宅でAさんと会っていたことになっているなど、少なくとも6回、虚偽の面談が報告されているという。「なぜ被告のような大企業で、このような虚偽の資料がつくられ続けるのか、不思議でなりません」とBさんは述べている。

 対する三井住友銀行サイドは、「Aさんは自身の判断で取引をしていた」との一点張りだった。

●三井住友銀行の全面敗訴

 13年10月21日、一審判決が下った。判決文には、医療機関の診断からみて、Aさんは「本件商品の各種リスクを理解することができる状態であったとは考え難く」「Cに投資信託取引を事実上委ねていることを認識していたかどうかすら相当疑わしい」として、「このような状態にある原告Aに本件取引を勧誘したことは、顧客の意向と実情に反して明らかに過大な取引を積極的に勧誘し、適合性原則に著しく逸脱したものというべきである」と断じた。

 また、被告のコンタクト履歴については「Aの発言内容等について虚偽の記載をするなどその信用性は乏しい」と言及。そして被告に対し、Aさんへ2055万円の支払いを命じる判決が下った。この判決を下したのは大阪地裁第18民事部の佐藤哲治裁判長、諸岡慎介・鎌田育巧美裁判官だった。その後の控訴審で、三井住友銀行がAさんに2400万円を支払うとして和解に至った。

メガバンクであっても、このような事件が起きるということを消費者にぜひ知ってほしい。
(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)

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