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問題の法律は、今年8月23日に「ドッド・フランク・ウォールストリート改革および消費者保護法」(ドッド・フランク法)に含まれて成立した「紛争鉱物の開示に関する規則」。ドッド・フランク法は金融規制法として、成立確実な法案であり、これに何故か「紛争鉱物に開示に関する規則」が付けられて成立したのだ。
この規則は、その名の通り“紛争地域”から産出される鉱物を使用することにより、その代金が反政府ゲリラなどに渡り、紛争の資金源になることを防止するという国際平和活動としての視点から作られたもの。
具体的な“紛争鉱物”とは、コンゴ民主共和国(DRC)またはその周辺国(アンゴラ、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ルワンダ、南スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビア)を原産とする可能性のある錫石、コロンバイト・タンタライト、金、鉄マンガン重石およびそれらの派生金属(すず、タングステンおよびタンタル)を指す。
対象となるのは、米国の証券取引法に基づく定期報告書を米証券取引委員会(SEC)に提出している企業で、これらの鉱物を使った製品を製造していれば、米国企業、外国企業の関係なく、使用している鉱物が紛争鉱物かを調査しSECに報告、開示する義務を負う。ただし、使用している鉱物が、明らかにスクラップもしくはリサイクルからのものである場合には、報告義務が一部軽減される。
これらの鉱物・金属は、ほんの一例に過ぎないが、すずは電子機器、自動車、産業機械など、タンタルは電子機器、医療機器、航空宇宙関連など、タングステンは電子機器、照明器具など、金は宝飾品、電子機器、航空宇宙関連など、さまざまな製品に多用途で使用されている。
前述のように、SECへの報告・開示義務は米国企業に限ったものではない。SECでは、国内外の企業6000社が影響を受けると推計ニューヨーク証券取引所に上場している日本企業も当然対象となる。
しかし、問題はそれほど生易しいものではない。例えば、自動車などは下請け、孫請けといった部品メーカーなどを合わせれば、何万社、何十万社という企業が関係してサプライチェーン(供給・流通網)を形成している。その中で、明らかに紛争鉱物を使用していない企業が別だが、使用している企業については、下請けであろうが、孫請けであろうが、すべて調査をする必要が生じる。
このため、米国のコンサルタント会社では、SECの10倍以上の企業に影響を及ぼすとしており、数十万社規模の企業に影響があると見積もっている。さらに、ひとつの企業においても、10社程度か数千社程度に上る企業から紛争鉱物使用に関する情報を収集しなければならず、その多くは未上場の中小企業になると予想している。