2月18日、サッポロビールの「サッポロプラス」、花王の「ヘルシアモルトスタイル」という2つのノンアルコールビールにトクホ(特定保健用食品)の表示許可が下された。
サッポロプラスは難消化性デキストリンにより糖の吸収を穏やかにする効果が、ヘルシアモルトスタイルは茶カテキンによって脂肪を消費しやすくする効果がそれぞれ認定された。アサヒビール、サントリービール、キリンビールも申請を出しており、ノンアルコールビールへのトクホ認定というトレンドが、しばらく続いていく見込みだ。とはいえ、「ビール」と「トクホ」という組み合わせには、違和感を感じる消費者も多い。昨年8月の段階では、認可を決定する内閣府の消費者委員会も、未成年の飲酒につながる懸念があるとしてノンアルコールビールに対するトクホ認定を「不適切」と判断していたが、今回はこの判断が覆ったかたちとなった。
1991年に保険機能食品制度が定められて以降、急成長を遂げてきたトクホ市場だが、2007年の市場規模(6798億円)をピークにして右肩上がりの成長にブレーキがかかる。09年、11年は5000億円台に低迷し、ようやく13年度に6000億円台へ回復した。この伸び止まりは市場の飽和や景気変動とともに、トクホの信頼性を大きく揺るがせたエコナ事件も無関係ではないだろう。
同事件では、09年、花王が発売していた食用油「健康エコナクッキングオイル」から、体内で発がん性物質に変化する懸念を指摘されている「グリシドール脂肪酸エステル」が高濃度含まれていることが判明。同社は販売を中止して、商品を自主回収する事態となり、トクホの信頼性を失墜させるかたちとなった。また、12年に発売され「トクホコーラ」として大ヒットを記録した「メッツコーラ」にも発がん性物質の含有が指摘されており、トクホ商品の安全性をめぐっては継続的な議論が行われている。
さらに安全性とは別の角度から、トクホへの信頼を揺るがしかねない事態も起こっている。
機能性食品開発会社リコムが5年にわたってトクホ申請手続きを行ってきた「蹴脂茶」に今年2月、不可解な判断が下された。これまでの経緯について、同社代表・浜屋忠生氏は次のように語る。
「消費者庁からは、蹴脂茶の成分であるエノキタケ由来成分『キノコキトサン』に減量作用があるということを一旦は認めてもらったのですが、その後、食品の安全性を審査する食品安全委員会で『本食品の安全性を評価することができない』という判断が下されたのです」
この結果、リコムが5年間で数億円の資金を投じて集めてきた臨床データは台なしとなり、蹴脂茶の発売自体もメドが立たない状態となってしまった。もちろん、食品安全委員会が安全性に問題のある食品をトクホに認定してしまえばそれこそ大問題であり、同委員会側としても厳しい評価体制が求められているといえる。しかし、浜屋氏の疑問はこの結果だけにあるのではないという。