「今回の法人減税は実施すべきではない」
3月25日、参議院本会議で代表質問に立った民主党の尾立源幸議員は、安倍政権の法人減税政策に疑問を呈した。理由は、2年間の法人減税先行により4120億円の歳入欠損が生じることに加え、復興特別法人税の廃止でさらに6453億円が減税され、合計1兆円が歳入削減になることだ。
財務省は15年度予算で、前年度に比べて4.5兆円の増収を見込んでいる。これなら1兆円の法人減税などは、容易に増収分で吸収できるように思える。何より安倍政権の経済政策は、企業の業績を向上させることによって賃金上昇を実現することを目指しているのだから、この減税分はやがては国民に広く及ぶことになる。だが、その通りに事が運ぶのだろうか。
実際にその内容を見ると、「いびつさ」があることは否定できない。尾立氏は、それを指摘している。
「昨年、個人の負担、すなわち復興特別所得税は残したまま、復興特別法人税だけ前倒しして廃止した。(略)そもそも復興特別税は、『復興を国民みんなで成し遂げるために財源もみんなで負担しよう』と決めたものだ。これを無視して企業を優遇しようという安倍政権の姿勢は正しいのか」(尾立氏)
さらに、減税の恩恵を受ける法人間にも偏りが見られる。特定分野の産業への優遇が目立つのだ。13年度分の財務省「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」によれば、製造業の税額控除案件は1万8058件で、適用金額は5879億円。1件あたり3256万円の計算になる。その中でも輸送用機械器具製造業については、1255件に対して2338億円も適用され、1件あたりの適用金額は1億8629万円と断トツに高額になる。
一方でサービス業では、税額控除案件は1万3290件と製造業の74%だが、適用額は212億円と製造業の3.6%にすぎない。1件あたりの適用金額160万円と、製造業に比べて極めて低い水準だ。
これを見ると日本は近代以降、重厚長大産業に対して保護を与えて輸出を増やして「富国」を目指してきたが、いまだにその傾向は続いているといえる。
となれば、「外国企業を誘致するための減税」という名目自体にも疑念を感じざるを得ない。
(文=安積明子/ジャーナリスト)