すでにロジック破綻
「(デフレに後退する)リスクは解消されている」。黒田総裁は金融政策維持の理由について、従来通りの説明に終始した。確かに昨年10月末に金融緩和を拡大した時の説明に基づけば、足元の状況はいつ緩和に動いてもおかしくない状況にある。
当時は大幅な原油安を理由に挙げ、14年4月に生鮮食品を除く消費者物価指数は1.5%(消費増税の影響除く)だったが急降下したため、緩和拡大を決めたと説明してきた。現在、同指数は2月時点で0%。マイナスになる可能性もあり、 2%には遠く及ばない。依然として原油も安値で推移している。エコノミストの間からは「10月にならえば、緩和すべき。すでにロジックが破綻している」と厳しい指摘も多い。
黒田総裁は2年を振り返り、「(金融緩和策は)所期の効果を発揮している」と述べた。確かに効果は一部で出ており、緩和効果による円安進行で、企業は過去最高水準の業績だ。一方、輸出や設備投資の回復は鈍く、業績と対照的に企業の慎重な姿勢は変わらない。株価は2万円を一時超えたが、地方経済への波及も「萌芽が出てきている状態」(地方銀行協会幹部)と緩やかだ。
広がる追加緩和観測
一番の想定外は、消費増税の反動減。企業業績の底上げで大手企業を中心に賃上げは広まったが、消費に結びつかず、物価上昇につながっていないことだ。1日に発表された日銀短観でも消費は回復の兆しは見えつつも、景況感を示す指標である大企業製造業の業況判断指数(DI)は想定を下回る結果となり、生産活動に力強さは欠いている。
労働需給が引き締まり、需給ギャップがタイトになっているとはいえ、緩和待望論が流れる材料は揃っているのだ。もっとも、8日の会合は統一地方選を控えており、緩和拡大に伴う円安進行による地方経済への影響を懸念して、金融政策に変更がある可能性は極めて低かった。焦点は4月30日の次回会合で、追加緩和に動くとの見方も市場関係者の間にはある。
実際、アベノミクスの仕掛け人である山本幸三衆院議員はロイター通信のインタビューに対して、物価見通しを発表する4月の会合を追加緩和の「良いタイミング」と指摘。景気の足踏み感と物価がマイナスに転じる可能性に言及し、今夏以降の景気回復を確実にするには追加緩和が「絶対的な条件」とまで言い切っている。