歌手の華原朋美さんが、所属事務所「プロダクション尾木」との契約解除を発表した。その背景には、「FRIDAY」(9月25日号/講談社)で報じられた「華原朋美が愛息虐待騒動で高嶋ちさ子と大モメ」という出来事があったのではないかといわれている。
華原さんと高嶋さんは、以前は互いに“親友”と認め合う仲だったようだ。しかし、昨年8月に未婚で長男を出産した華原さんが、信用する高嶋さんから「かつて自分の子どもたちも預けた」と紹介されたベビーシッターを雇ったところ、自宅の監視カメラの動画に、ベビーシッターが長男の足首を持って逆さ吊りにした状態が映っていたらしい。
そのため、華原さんは、これは虐待だと主張し、動画を持って警察に相談に行ったが、さまざまな検証が行われた結果、「虐待ではない」という判断が下された。だが、華原さんとしては納得できなかったのか、防犯カメラの映像を切り取った画像や高嶋さんとのやりとりが書かれたLINEのスクリーンショットなどを「FRIDAY」編集部に持ち込み、記事になったという(9月15日付「週刊女性PRIME」記事より)。
おそらく華原さんがベビーシッターに対して腹を立て、その怒りが高嶋さんにも向けられたのだろう。どれほど怒りが激しかったか、容易に想像がつく。というのも、私自身、かつて華原さんが怒りを爆発させるのを目の当たりにしたことがあるからだ。
7年前、2013年に芸能人の悩みに専門家が答えるという趣旨のテレビ番組の収録に参加した際、私が精神科医だと自己紹介した途端、華原さんが拒否反応を示して激高した。「私は、精神科でもらった薬で依存症になったんです!」とものすごい剣幕で怒鳴られ、ただ唖然とするばかりだった。
たしかに、交際していた音楽プロデューサーの小室哲哉氏と破局した後、華原さんは精神的に不安定になり、精神安定剤や睡眠薬を服用し始め、オーバードーズ(過剰摂取)で救急搬送されたこともあるようだ。2007年には、仕事のドタキャンなどが続いたせいで所属事務所から契約解除を通告された。その後、薬物依存症の治療のために家族が華原さんを精神科病院の閉鎖病棟に入院させたようで、そのことは華原さん自身がテレビ番組やインタビューなどで告白している。
華原さんは入院治療の甲斐あって、2012年に芸能界に復帰した。だから、私が番組収録の場で華原さんに出会ったのは、復帰から間もない時期だった。華原さんが依存していた精神安定剤や睡眠薬を手に入れるには、原則として精神科医の診察を受け、処方してもらわなければならない。そのせいで、処方した精神科医への怒りを抑えられず、同業者である私にも怒りが向けられたのかもしれない。だが、私はそれほど寛大な人間ではないので、「私が処方したわけでもないのに、なぜ怒りをぶつけられるのか」と納得しがたい気持ちになった。
非常に不安定で自己破壊的行為を繰り返す
このように激しい怒りを爆発させることがあると、安定した対人関係を築くのは難しい。どうしても不安定で激しい対人関係になりやすい。
それに拍車をかけているように見えるのが、理想化とこきおろしの両極端を揺れ動く傾向である。高嶋さんとの関係に如実に表れているように、かつては“親友”と呼び、理想化していたのに、ベビーシッターをめぐる騒動で怒りを爆発させると、雑誌で告発して、こきおろす。
しかも、不安定であるがゆえに、衝動的な自己破壊的行為を繰り返す。先ほど述べたように、華原さんは精神安定剤や睡眠薬の乱用から依存症になり、精神科病院に入院したこともあるのだが、今回の契約解除の原因になったのも薬物乱用ではないかと「文春オンライン」(9月16日配信)で報じられた。音楽関係者の「(契約解除の)理由は若い頃から乱用していた精神安定剤や睡眠導入剤などの薬をやめられないからです」という証言が紹介されている。
おまけに、「文春オンライン」によれば、薬の影響で、少なくともここ1年で、母親の家と(母親が経営する)美術館がある那須で2度、新宿で1度、事故を起こしているという。とくに今年3月には那須で、フェラーリを大破させる事故を起こしており、そのときも薬で酩酊状態だったようだ。
短期間に事故があまりにも多い印象を受けるが、これは薬の影響もあって、無謀な運転を繰り返したせいではないか。このような無謀な運転や薬物乱用がもし事実であれば、いずれも自己破壊的行為である。
自分自身を傷つけるということに関していえば、1999年に自宅でガス中毒で倒れて緊急入院し、自殺未遂ではないかと取り沙汰された。その後も睡眠薬のオーバードーズが何度か報じられている。
このように華原さんは感情も対人関係も非常に不安定で、激しい怒りを爆発させることがあるように見受けられる。また、自己破壊的行為を衝動的に繰り返す傾向も認められる。
こういう人とは距離を置きたいと思うだろう。高嶋さんも、華原さんとは二度と関わりたくないのではないか。その結果、周囲に信頼できる人がいなくなり、自分が誰からも見捨てられるのではないかという「見捨てられ不安」が強くなる。この「見捨てられ不安」のせいで、さらに不安定になり、オーバードーズに拍車がかかることも少なくない。
つまり、現在の華原さんは悪循環に陥っている可能性が高い。こういう状態は、最愛の長男の発育にも影響を及ぼしかねない。だから、きちんと精神科医の診察を受け、1日も早く精神の安定を取り戻してほしいものである。
(文=片田珠美/精神科医)