卵の食べすぎとお菓子のつまみ食い、血管に悪いのはどちらでしょう?
答えは、お菓子! 「本当?」と思った人は、ぜひ今回の解説を読んでみてください。今日から、コンビニエンスストアで選ぶものが変わること請け合いです。
脂肪の塊が侵入すると血管が詰まりやすくなる
動脈は、酸素や栄養分を運ぶ大事な血管です。動脈の血流が途絶えたら、組織や細胞が死んでしまいます。特に、心臓の筋肉に酸素を運ぶ血管が詰まる心筋梗塞や脳に行く血管が詰まる脳梗塞などは、命にかかわることもある重大な病気です。
血管の内側が狭まっていると、その危険性がより高くなります。血管の内腔が狭くなる理由は、血管の内側にできる瘤(こぶ/別名:プラーク)です。プラークは、血管の小さな傷口から脂の塊が徐々に侵入することで、できていきます。今回は、その脂肪の塊についてお伝えします。
血液には「ドロドロ」や「サラサラ」などの表現がよく使われるため、「血液中に脂が溶けていて、血管の壁にペタペタとくっつく」というイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし、脂は水に溶けにくく、血液とは混ざりません。そのため、脂はたんぱく質と一緒に球形の塊をつくって移動します。この塊を「リポ蛋白」と呼びます。リポ蛋白は、いわば脂を運ぶトラックです。
リポ蛋白のトラックは、中性脂肪やコレステロール、そのほかの脂質を積み込んで出庫し、途中で積み荷の脂質を配送します。最終目的地に到達すると、トラックごと車庫(細胞)に収納されます。
小腸から吸収した脂質を運ぶのがカイロミクロン、肝臓から合成した脂質を運び出す役割をしているのが超低密度リポたんぱく質(VLDL)、脂質を回収して肝臓に運ぶ役割をしているのが高密度リポたんぱく質(HDL)です。VLDLが積み荷を降ろした後の姿を、低密度リポたんぱく質(LDL)と呼びます。
卵の食べすぎは本当によくない?
さて、「コレステロールを摂取しすぎると、動脈硬化になる」と言われたことはありませんか? そのため、なんとなく卵や肉を控えているという人もいるかもしれません。
卵などのコレステロールを多く含んだ食品をたくさん食べると、血液中をめぐる脂の塊=リポ蛋白の量は一時的に少し増えます。しかし、同時にコレステロールを回収するリポ蛋白も増えるので、血管内のプラークが増えることはありません。
そもそも、肝臓は食べることで摂取される量よりも多くのコレステロールをつくっています。血管もリポ蛋白が入ってこないように備えをしています。きちんと配送して、きちんと回収している限り、リポ蛋白が増えても血管プラークとは無縁なのです。
(なお、リポ蛋白の配送・回収システムに遺伝的に異常を持っている方もいます。そのような方は、リポ蛋白が長く血管内に留まり血管プラークの原因になることがあります。近親者に突然死したり心筋梗塞や脳梗塞を発症したりした人がいる場合には、特別な注意が必要です)
お菓子は若さの大敵!活性酸素で老化促進も
ところが、お菓子となると話が変わります。砂糖が大量に使われた甘いお菓子やスナック菓子を食べると、活性酸素が発生しやすくなるからです。活性酸素は「若さ」の大敵! 老化を促進したりがんや認知症になりやすくなったりするなど、体に悪影響を与える物質です。
また、活性酸素は血管やリポ蛋白を攻撃して傷つけます。活性酸素の攻撃によって傷ついたリポ蛋白は、車体や荷物に傷がついたり行き先表示のタグが破れたりしたトラックのようなものです。納品先から受け取りを拒否されて、いつまでも血管内をグルグルと回り続け、やがて傷口から血管内の壁に入り込みます。
血管の傷には、修復のための炎症細胞が活動していて、その中のマクロファージという“掃除屋”が、不良品となったリポ蛋白をパクパク食べます。リポ蛋白を食べたマクロファージの蓄積によって、血管プラークが太るのです。
リポ蛋白は常に血液中をめぐっているため、脂肪をたくさん摂取しなくても、お菓子やお米などを食べることによって活性酸素が増えると、血管プラークの危険が増します。
そして、糖に加えて脂肪をたくさん摂取すると、さらに危険が増します。糖と脂肪を含んだ食品は、「スーパー悪玉リポ蛋白」を増やすからです。「最近、おなかがポッコリしてきたな」という人は、牛丼やハンバーガーなどを頻繁に食べたり、揚げ物などで油を摂りすぎたりするのはやめたほうがいいでしょう。
次回は、そのスーパー悪玉リポ蛋白がどのようにできるかについて、お伝えしたいと思います。
(文=西澤真生/ひめのともみクリニック 医師)