最近、30代から40代の日本人女性に「乳がん」が急増している。乳がんは女性に最も多い悪性腫瘍で、日本人女性の場合、発生のピークは40代。日本人女性の30~40代の死因のトップは乳がんである。
その最大の原因は、欧米型の食生活への変化である。つまり、肉類と乳製品の摂取過多が問題の原因と考えられている。
牛乳とは「エストロゲン(女性ホルモン)」の濃度の高い、分娩後の雌牛から搾取した「おっぱい」だ。日本の酪農では、分娩後、半年すると、授乳中の牛が人工授精されるため、エストロゲン濃度が高まることが避けられない。
こうした牛乳を原料とする、チーズ、バター、クリームといった乳製品には、エストロゲンが特に濃縮されている。
さらに詳しく説明すると、乳牛は分娩後、胎盤から分泌される大量のエストリオール(E3)がなくなり、卵胞機能が抑制されているため、授乳期の血中エストロゲン濃度は妊娠中ほど高くはない。だが、授乳期(分娩後)のメス体内から分泌される牛乳には、実はエストロゲン作用が認められる。
市販の低脂肪牛乳中のエストロゲン濃度は約700pg/mlで、62%がエストロンである。エストロンの87%は硫酸抱合されている。この低脂肪乳には、卵巣摘出ラットの子宮重量を増加させる弱いエストロゲン効果がみられる。
一般に、乳がん患者は非乳がん患者より、血中エストロゲン濃度が高い傾向がある。また、血中エストロゲン濃度は、牛乳消費量の多い欧米女性に高く、牛乳消費量の少ないアジア女性は低い傾向にある。
世界42カ国で行われた、がん発生率と食品摂取の関係についての調査をみると、乳がんと最も関係の深い食品は肉、次いで乳・乳製品。また、子宮体がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がんでは、乳・乳製品が最重要だった。
ちなみに、肉類(特に牛肉)についても、去勢した雄の肉(女性的で柔らかくなる)が多いため、比較的エストロゲンの含有量が高くなっている。
驚くなかれ、松阪牛、飛騨牛、米沢牛といった「柔らかさ」を売りにしている高級和牛は、去勢したあとに糖分をたくさん食べさせ、「筋肉が弱って立てなくなる寸前」が一番うまいのだそう。日本独特の畜産のノウハウだ。やはり牛肉は、安いもの、硬めのものが、体にいいのかもしれない。
閉経後に乳がんや子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクが高まる
太ると脂肪細胞が増える。脂肪と同じように、甘いもの(糖質)を取りすぎると、余った糖質は体内で脂肪に変換されて、脂肪細胞に貯められる(肝細胞に中性脂肪=トリグリセリドが貯まると脂肪肝になり、動脈壁にコレステロールが貯まると動脈硬化になる)。
脂肪細胞には、テストステロン(男性ホルモン)をエストロゲンに変える酵素(アロマターゼ)が含まれている。つまり、エストロゲン産生工場である卵巣の機能が停止した閉経後に肥満になると、血中のエストロゲン濃度が高まる。
閉経後は、どうしても太りやすい。そのため結果的に、乳がんや子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクが高まるというわけ。
乳製品や高い牛肉のステーキを控える(適量にする)、そして植物線維の多い和食(ご飯とみそ汁)に切り変える。こうすることで、乳がんだけでな大腸がんのリスクも減るだろう。そのうえで、糖質、脂質を少し控えめにしたバランスのよい食事を心がけよう。
(文=堤寛)