メタボ、甘く見ると恐ろしいことに…揚げ物やファストフードで脳梗塞や心筋梗塞のリスク増大
「最近、おなかが出てきたなぁ」「検診で、中性脂肪の数値が高くなってきた」――そんな人は、いつの間にか「スーパー悪玉リポ蛋白」が増えているかもしれません。
スーパー悪玉リポ蛋白は、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる物質です。若いからといって、油断は禁物! 今回は、そんなスーパー悪玉リポ蛋白の正体についてお伝えします。
大事なリポ蛋白が“悪玉”に姿を変える
本連載前回記事でお伝えしたように、「リポ蛋白」とは、脂肪やコレステロールを全身に運ぶ大切な役割をしている物質です。
脂肪は全身の細胞のエネルギー源として使われ、コレステロールはホルモンや細胞膜の材料として使われます。いずれも、きちんと運ばれないと体は元気に働くことができません。そんな大事な役目を担っているリポ蛋白ですが、ある条件下では“悪玉”に姿を変えてしまいます。それが、スーパー悪玉リポ蛋白です。
スーパー悪玉リポ蛋白の特徴は、「利用されにくいこと」「酸化されやすいこと」「血管の壁に入りやすいこと」です。また、いくつかのタイプがあります。ひとつは「sdLDL」という、通常よりサイズが小さく中性脂肪を多く含むリポ蛋白です。
sdLDLは、通常より中性脂肪を多く含むリポ蛋白が、さらにコレステロールを奪われてできあがると考えられています。TGリッチLDLとsdLDL1(オフィスひめの作成)
もうひとつは「レムナント」と呼ばれるリポ蛋白です。レムナントとは残渣・遺物という意味です。食事から吸収された脂肪を運ぶカイロミクロンや肝臓でつくられた脂肪を運ぶ超低密度リポたんぱく質(VLDL)は、中性脂肪を配達しながら血液中を移動し、短時間で消失します。しかし、中性脂肪を積みすぎたり配達が滞ったりすると、血液中を長く漂うことになります。それがレムナントです。
レムナントの恐ろしいところは、「少しの力で血小板が凝集しやすくなること」「血管壁に入りやすいこと」「活性酸素の力を借りなくても、血管壁に炎症を起こしたりプラーク(血管の内側にできる瘤)を太らせたりできること」という3点です。
前回記事で、砂糖が大量に使われた甘いお菓子やスナック菓子を食べると、活性酸素が発生しやすくなり、その活性酸素は血管やリポ蛋白を攻撃して傷つけることをお伝えしました。レムナントは、活性酸素なしでも血管に悪影響を与え、最悪の場合は脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしてしまうということです。
揚げ物やファストフードの食べすぎには要注意!
「おなかの肉が気になる」「揚げ物が好き」「牛丼やハンバーガーなどのファストフードをよく食べる」という人は、スーパー悪玉リポ蛋白が出現している可能性が高くなります。
おなかが出てきたのは、内臓の脂肪細胞が肥大してきたサインです。脂肪細胞は、肥大すると中性脂肪の配達を邪魔するホルモンを出します。肝臓に中性脂肪をたくさんつくらせて、sdLDLやレムナントの元になるリポ蛋白を増やします。また、揚げ物や脂肪を多く含む食品を食べると、中性脂肪の積み荷が多くなるためレムナントになりやすくなります。肥大した脂肪細胞はスーパー悪玉リポ蛋白を増やすだけでなく、血圧を上げたり血糖値を下がりにくくしたり、血栓をできやすくしたりするホルモンを出すようになります。性質が変わってしまうわけですが、脂肪細胞の性質が変わった状態がメタボリック症候群です。メタボリック症候群は、ただ太っていることとはまったく違い、大変恐ろしい状態です。
メタボリック症候群と脂肪細胞のホルモンについては、次回にご説明したいと思います。
(文=西澤真生/ひめのともみクリニック 医師)