ロキソニン(ロキソプロフェン)といえば、医師の間でも愛用している人が多い人気の鎮痛・解熱剤だ。病院で処方されるほか、2011年からは「ロキソニンS」として店頭でも販売されている。
頭痛や生理痛時にはお世話になるという人、旅行には必ず持参する人も多いのではないだろうか。
当サイトでもその愛用ぶりを紹介した。「医師が常用する薬で多いのは降圧薬と脂質異常症治療薬、ロキソニンも人気!」
ところが、この人気薬には腸閉塞などの重大な副作用のリスクがあるとして、厚生労働省が注意を呼び掛けている。
ロキソニンで腸閉塞のリスク!?
厚生労働省は昨年3月22日、解熱鎮痛消炎剤の「ロキソプロフェンナトリウム水和物(経口剤)」(商品名・ロキソニン錠60mg、同細粒10%、ロキソプロフェンナトリウム内服液60mgなど)について、医薬品添付文書の「重大な副作用」の項目に「小腸・大腸の狭窄・閉塞」を追記するよう指示を出した。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の報告書によると、過去3年度における国内副作用症例のうち、小腸・大腸の狭窄・閉塞関連症例が6例報告されており、そのうち因果関係が否定できないものが5例であった(死亡例はなし)。改訂は、この結果を受けたものである。
店頭販売薬(ロキソニンS[第一三共ヘルスケア]他)についての小腸・大腸の狭窄・閉塞関連症例は報告されていないが、医療用医薬品添付文書と合せて改訂される。
あなどれない胃腸の副作用
ただし、これは、ロキソニンに全く新しい副作用が見つかったということとは少々異なる。ロキソニンが消化器系の副作用を伴うことは、これまでにも知られてきた。
この副作用はロキソニンが効くメカニズムに関係する。ロキソニンに代表されるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、炎症を引き起こす「プロスタグランジン」という物質の生合成を抑制することによって痛みや発熱を抑える。
その一方で、プロスタグランジンは、実は胃腸の粘膜を保護する働きもしている。つまり、プロスタグランジンの生成を抑えてしまうと胃腸のバリア機能も弱くなり、粘膜が荒れやすくなるのである。
病院でロキソニンを処方される際には、空腹で飲まないように指示され、「ムコスタ(一般名:レバミピド)」などの胃薬を一緒に処方されることが多いのはそのためだ。
昨年の改訂で新たに加わった「狭窄・閉塞」は、胃の粘膜が荒れ、潰瘍ができ、さらに進行した症状である。潰瘍が進行して腸管が狭くなった状態を狭窄、さらに進行して腸管が詰まった状態を閉塞という。閉塞すれば、大変な痛みを引き起こし、死亡に至るケースもある。
薬とどうつき合う? 作用と副作用は表裏一体
昨年の発表は、薬の副作用について改めて考えさせられるものだった。どのような薬も副作用が伴う。作用と副作用は裏表であるし、症状の現れ方は人それぞれであるから、必要以上に怯えることはない。うまく薬とつき合っていくことが大切だ。
まずは、副作用の可能性を頭に入れておくこと。処方薬にしても店頭販売薬にしても、添付文書をよく読めば、ロキソニンに限らず多くの薬が、かなり重篤な症状も想定されていることがわかる。こうした情報を頭に入れておき、服用後に少しでも「おかしいな」と感じることがあれば、すぐに医師や薬剤師に相談しよう。
そして当然ながら、服薬の指示は守ること。特に店頭販売薬の場合には、安易な使用を避け、必要最低限の服用に留めれば、それだけリスクを減らすことができる。当サイトでも呼びかけてきた。「過去5年間に副作用で24名が死亡! 安易に「市販薬」を服用してはいけない」
「薬が命取り」となることがないよう、消費者側の自衛も求められている。
(文=ヘルスプレス編集部)