ゴールデンウィークに、旅行や帰省などで長距離運転をする人は多いのではないだろうか。長時間の運転は心身ともに疲労するが、それだけでは済まされない危険をはらんでいるという。
東京脳神経センター理事長で脳神経外科医の松井孝嘉医学博士は、「長時間のドライブにより首こりが悪化し、いわゆる“ドライブ首”が増加します」と警鐘を鳴らす。
「ドライブ中は、首を動かさず長時間同じ姿勢でいることが多いため、筋肉が伸縮せずにこりが生じます。すると、自律神経失調による不調が全身に現れやすくなるのです。自律神経が失調すると、副交感神経の働きも悪くなります。その結果、脈拍や血圧が不安定になり、頭痛やめまい、ドライアイ、不眠などの症状が現れるのです」(松井氏)
運転中は頭が前方にいきがちで、首の後ろの筋肉がずっと引っ張られた状態になる。これが“ドライブ首”といわれるもので、こりだけでなくさまざまな不調が出やすくなるという。
「運転中は正しい姿勢を取ることが大事です。シートとハンドルを近づけすぎると前かがみになるので、首に負担がかかってしまいます。また、倒しすぎても前を見るために首に負担がかかるので、首のこりの原因になります。立っているときと同様に、頭が自然に首に乗っている状態をキープするようにしましょう」(同)
長時間運転は首に負担がかかるので、15分に1回を目安にストレッチを行うとよいそうだ。渋滞時やサービスエリアなどでの休憩時を利用して行うようにしたい。具体的なストレッチの仕方を紹介しよう。
【首のストレッチ法】
1.イスに深く腰かけて、背中を背もたれにつけ、両手を頭の後ろにまわして組む。
2.次に頭を後ろに倒していき、首が痛くなる手前で止め、そのままで30秒保持する。
3.倒した頭を元に戻す。このとき、頭に添えていた手は、頭を戻すのを助けるようにすること。
首のこりが自殺につながる?
現代人は、運転だけでなく日常生活でも首がこりやすい状態にあり、「猫背の人も、ドライブ首と同じ症状が現れやすくなります」と松井氏は指摘する。パソコンやスマートフォンを同じ姿勢で使い続けることも同様で、体の不調の原因の多くは首のこりによるものが多いという。
「女性特有の更年期障害や冷えはホルモン異常が原因だと考えられてきましたが、副交感神経の働きが悪くなって症状が現れるケースが非常に多いです。副交感神経には涙を流す作用もあり、首のこりが原因でドライアイになることも珍しくありません」(同)
さらに、首のこりはうつ病とも深い関係にあることが明らかになったという驚きの報告もある。
「副交感神経は、よろこびや幸せを感じる神経でもあります。これが働かなくなれば、生きていても仕方ないと感じてしまい、最悪の場合は自殺を考えるようになってしまいます。実は、精神性のうつ病よりも自律神経に起因するうつ病のほうが、自殺予備軍は多いのです」(同)
このように、首のこりは多くの症状を引き起こす原因となるが、「首の状態を正常化することで、体の不調のほとんどを解決できる」と松井氏は言う。東京脳神経センターでは、特殊な波形の周波を首の異常がある個所にあてることで、治療を行っているそうだ。
首のこりは筋肉が弱い女性のほうが症状を訴えやすいといわれていたが、近年では若い男性でも筋肉量が減少傾向にあり、冷え性を訴えるケースも増えているという。体調不良に陥らないようにするためにも、首の疲れを感じる前にストレッチを行い、メンテナンスをしていきたいものだ。
(取材・文=OFFICE-SANGA)
取材協力:東京脳神経センター