「アンチエイジングにいい」「睡眠の質が上がる」「がんを予防する」……運動の効果が今、さまざまな研究で実証されている。
運動はカラダにいい――。それでも運動が習慣となりにくい理由のひとつに挙げられるのは、「どんな運動を、どれくらいしたらよいのかわからない」というもの。具体的に取り組むべきメニューがボンヤリしているから「実行するのは、また今度……」となるわけだ。
そこで、今回は健康効果をもたらすと考えられる、具体的なメニューを探ってみよう。
週に2時間半、やや負荷のある運動
一般的な「推奨される運動の量」は、「週に2時間30分の、やや負荷のある運動」、ジョギングやストレッチ。または「75分の強めの負荷」、テニスや全力に近いダッシュ、サイクリングなどとされる。
しかし、この数値は、フルタイムで仕事をしている人にとっては、ややハードルが高く感じるだろう。運動習慣のない人が、全力疾走やテニスを日常生活に取り入れるのは、なかなか難しい。
そこでオススメなのが「ウォーキング」だ。歩くことは比較的簡単で、工夫次第で歩く距離や速さを変化させることもできる。
1日1万5000歩で心臓疾患の発症リスクが低下
では、どのくらい歩くと良いのだろうか。
『The International Jornal of Obesity』に掲載された論文によると、「1日に1万5000歩」という報告がある。これは、主にデクスワーク業務の人(55人)と、歩くことが多い業務の人(56人)を10年間追跡調査したもの。
その結果、当然、歩くことが多い人たちのほうが、心臓疾患の発症率が低くかった。さらに、そのなかでも1日1万5000歩以上を歩く人たちは、心臓疾患の発症リスクがさらに低かったと報告されている。
歩かないより歩いたほうが健康に良いのは当たり前だが、「1日1万5000歩以上がより効果的」という結論だ。
1日1万5000歩以上歩くことが難しい場合は、どうすればいいのか。報告では、「7時間立っていると、同程度の効果が得られる」とも述べられている。さらに、この論文の著者は「立っていると、座っているより40%も多くカロリーを消費する」とコメントしている。
コスパに優れたがん予防法
すでに、さまざまな論文で「歩くことはがんを予防する」と報告されている。
そのひとつ、アメリカ医師会の内科学雑誌『JAMA』に発表された報告によると、「13種類のがん」がウォーキングで予防できるという。この13種類は、食道腺がん、肺がん、腎臓がん、直腸がんなど、がんのなかでもメジャーなものが多く含まれている。
この論文では、週5回以上のウォーキング(約2.3km)で、その効果が得られたという。なぜ、歩くことががんを予防するのかは、はっきりと解明されていない。
だが、運動(ウォーキング)によって、インスリンの過剰な分泌を抑えられること、活性酵素やフリーラジカルといった、がんの発生を誘発する物質の生産を抑えることができるからだというのが、最近の見解だ。
「歩くだけ」でよいのならば、コストパフォーマンスに優れたがん予防である。このように「歩くだけ」でも、多くの効果をもたらす「運動」であることが判明している。これまでも、運動は「副作用のない薬」と言われてきた。カラダを動かす機会が減っている現代人は、その効果を学び意識的に取り組んでみよう。まずは「歩く」だけで大丈夫。運動習慣の一歩を踏み出そう!
(文=三木貴弘)