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国立系の3医療機関、病床利用率4~7割…国からコロナ補助金・計2405億円受領

文=編集部、解説=上昌広/医師、医療ガバナンス研究所理事長
国立系の3医療機関、病床利用率4~7割…国からコロナ補助金・計2405億円受領の画像1
国立国際医療研究センターのHPより

 会計検査院は13日、新型コロナウイルス対策として病床確保を目的に国が行っている補助金事業について、受給した医療機関のうち496を抽出して行った調査の結果を公表。このうち医業収支の分析対象となった269の医療機関の平均収支額が約4億円の赤字(2019年度)から約7億円の黒字(21年度)に大幅に改善していたことが判明した。また、調査対象となった496の医療機関のうち、20~21年度に補助金を受給しながらも病床利用率が50%を下回っていた医療機関も半数以上(269)あり、看護師不足などを理由にして都道府県からの入院受け入れ要請を断っていた医療機関も約3割あることが判明した。

 新型コロナ患者の受け入れ病床拡充のために国が医療機関に交付する病床確保料とは、患者受け入れのため病床を空けた場合、一般病床は一日・一病床当たり最大7万4000円、ICU(集中治療室)は最大43万6000円が交付されるというもの。3483の医療機関に計3兆3848億円が交付され(20~21年度)、病床利用の実績にかかわらず病床を確保しているだけでその日数分が交付される。

「補助金によってコロナ患者の病床数が増えたのは事実だが、救急患者の受け入れ先が長時間見つからない問題や、患者が入院できず自宅待機を強いられる問題が多発していたのも事実。税金から巨費を投入して病床が確保されただけで、実効性が伴っていなかったのではないかという疑問は残る」(医師)

公衆衛生危機に対応することを法的根拠として設置された独立行政法人

 医師で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は次のように解説する。

「会計検査院がコロナ病床補助金の杜撰さを示す調査結果を公開した。私は、さらに詳細は情報開示が必要だと考えている。なぜなら、『平均』の議論をしても実態は見えないからだ。

 医療ガバナンス研究所は、厚労省の公開資料に基づき、昨年8月3日現在の首都圏、関西圏の主要26病院の患者の受け入れ数と受け取った補助金額を調べた。その結果を表1に示す。

国立系の3医療機関、病床利用率4~7割…国からコロナ補助金・計2405億円受領の画像2

 即応病床に占める入院患者の割合は、慶應義塾大学126%、順天堂大学125%のように100%を超えるところもあったが、26病院中19病院は、第7波真っただなかの8月3日でも空床を抱えていた。兵庫医科大学の稼動率は36%、国立国際医療研究センターの稼動率は42%にすぎなかった。これは、第7波での流行の主体がオミクロン株で、重症化した患者の多くが高齢者だったからだろう。認知症などの合併症を抱え、要介護の人が少なくない。大学病院などの高度急性期病院が果たす役割は本来、限定的だ。在宅や地元の医療機関で治療できるようにしなければならないが、コロナが感染症法2類のままなので、厚労省・保健所が統制するため、地域の医療関係者による自立的な調整機能が働かなかった。医療現場だけでなく、厚労省の問題が大きい。

 私が一般化の議論の意味がないと思うのは、本来、公衆衛生危機に対応することを法的根拠として設置された厚労省関連の独立行政法人の状況が酷いからだ。国立病院機構、地域医療機能推進機構(JCHO)、国立国際医療研究センターの昨年8月3日現在の即応病床の受け入れ率は、それぞれ65%、72%、42%だ。一方、21年度の財務諸表によれば、それぞれが受け取った補助金は1317億円(2019年度比2803%増)、569億円(同4279%増)、519億円(同675%増)だ。他の大学病院の伸び幅とは桁が違う。

 感染症治療の基本は感染者の隔離だ。病院も集約化したほうがいい。感染症法が入院すべき病院を一部の独立行政法人に絞ったのは、このような背景があるからだ。国立病院機構やJCHOは、大学病院のような高度急性期医療機関ではない。多様な患者に対応できるはずだ。ところが、いざパンデミックとなると、『税金泥棒』と呼ばれても仕方ない状況だった。次のパンデミックに備えるためにも、病院一般を叩くのではなく、もっと踏み込んだ分析が必要だ」

 21年度当時、JCHO理事長を務めていたのは政府の新型コロナウイルス対策分科会会長・尾身茂氏だが、巨額の税金が投じられた上記3つの国立系医療機関が十分に機能したのかも検証されるべきではないか。

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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