こういった状況に対して、金融庁は遅ればせながら問題意識を持ち、ポイントを外し気味とはいえ、取り締まるようになった。
そこで、証券業界の逃げ込み先の一つとして期待されているのが、ラップ口座だ。販売側は、「ラップでは、期間当たりの手数料は一定なので、無理な乗り換え勧誘をしていません」「顧客の事情に合わせた、きめ細かな運用サービスを実施しています」とうたうことができる。
しかし、売買手数料の上限が決まっているとはいえ、ラップ口座「だけ」に対しても、毎年2%前後の手数料がかかる。投信の頻繁な乗り換え勧誘に乗せられて強盗並みの手数料強奪に会わない代わりに、泥棒に入られた位の保険料を予め払うようなものがラップの手数料だ(なにが悲しくて、そんなに多額の手数料を払うのだろうか……)。
ラップ口座の残高が急伸していることを報じた日経新聞の記事には「投資初心者囲い込み激化」という見出しがあった。これは、一般の個人投資家にとって真に恐ろしい状況を意味する。
この見出しをわかりやすく説明すると、ラップ口座がどのくらい損なのか判断できない、金銭的損得のリテラシーが未発達な顧客(「カモ」とフリガナを振りたい)を、金融機関が激しく取り合っている、ということになる。
ラップ口座は即解約が賢明
投資の初心者もベテランも、現在大手金融機関が提供しているラップ口座を契約することは、愚かな行為といえる。すでに関わってしまった場合は、速やかに解約することが経済合理的な行動だ。
第一の理由はラップ口座、特にファンドラップの総合的な手数料の高さだ。日経新聞では「手数料、平均2%前後」と書かれていたが、年率1%以上の運用手数料は、ほかの運用手段と比較すると、明らかに高い。年率2%などという暴利に至っては、話にならない。
第二に、そもそも金融機関のラップ口座の担当者には、個々の顧客に応じた運用を設計する能力などないという点が挙げられる。せいぜい、いくつかのパターンに合わせて、運用管理手数料の高い商品を放り込むのが関の山だ。形だけ、ラップ口座用の投資顧問会社を噛ませても、実態は変わらない。珍しく善意を持った担当者がいたとしても、あまり役に立たないだろう。
第三の理由として、金融マンには、上記の「善意」を持つためのインセンティブなどない場合が多い。ラップ口座の担当者に存在するインセンティブは、信託報酬が高いぼったくり的な商品を、いかに顧客に売ることができるか、という種類のものだ。