株式投資などの資産運用にはリスクがつきものですが、そのリスクを小さくする手法として、分散投資とともに挙げられるのが、「長期投資」です。短期の売買は利益となる場合と損失となる場合の差が大きく、リスクが大きい。それに対して長期投資をすれば、運用成果のブレが小さく、リスクが抑えられる、というものです。本当でしょうか?
「長期投資=リスクが小さい」を検証してみる
株式投資では今後の動きを予想して、うまく売買できれば利益を得られます。しかし相場の動きを当てるのは難しいものです。その点、10年、20年といった長期間にわたって株式を保有していけば、その間には下落局面もありますが、上昇局面もあり、それらがならされて、ほどほどの成果となることが考えられます。この点は私も同感です。しかし、だからといって「長期投資=リスクが小さい」と考えると誤解を招くことになります。
長期投資はリスクが小さいので、大儲けもない代わりに、大きな損失となる可能性も少ない、と考えると適切ではありません。長期投資は、大儲けも大損もありえるからです。むしろ、その点は短期投資よりもリスクが大きいといえるでしょう。
実際の株価を使って検証してみましょう。バブルとその崩壊がおおむね終わった1992年1月から2019年7月までの日経平均株価を使って、1カ月の投資、1年間の投資、10年間の投資での成果を比較してみます。それぞれ、最大の成果となったケースと最悪の成果となったケースを見てみます。その差が大きいほどリスクが大きい、差が小さいほどリスクが小さいと考えられます。
1カ月間の投資では、最大の成果となったのは+16.1%。可能性としては小さいのですが、これが12カ月続いたと考えると、年利で502.5%となります。最悪の成果は1カ月間で‐23.8%。同様の計算で年利‐92.2%となります。
1年間の投資では、最大の成果となった時は+65.8%。最悪の成果は‐48.8%です。10年間の投資(日経平均を10年間持ち続けた場合)では、最大の成果は年利で10.9%、最悪の成果は年利で‐9.4%となりました。
投資期間が長くなるほど、最大の成果でも最悪の成果でも、プラス、マイナスそれぞれで数値の値(絶対値)が小さくなっています。成果のブレが小さくなっており、リスクが小さくなっているといえます。10年間保有し続ければ、年利でプラスマイナス10%程度の範囲までに収まっています。やはり株式ですので、それでもリスクは小さくありませんが、1カ月間の投資と比べると、はるかに小さいといえます。