消費者庁が家庭内の溺死増加に注意喚起
厳冬期を迎えた1月下旬、消費者庁が全国の消費者に向けて『冬場に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!』という注意喚起情報を発信しました。
厚生労働省の『人口動態調査』によると、図表1にあるように、家庭内の浴槽で溺死する人が年間5000人近くに達し、この数年は高止まり傾向にあります。さらに、浴槽内の事故で救急搬送された後に死亡が確認された人まで含めると、年間の死亡者数は約1万7000人に達するのではないかという調査もあるほどです。
その最大の要因はヒートショック。急激な温度変化によって血圧が上昇したり下降したりすることによって、脳血管障害、心筋梗塞などを引き起こして倒れてしまうのです。
住む人の生命を守るはずの住まいが凶器に
古い住宅だと、家族が集まるリビングは25度以上なのに、脱衣所や浴室の温度は10度以下、場合によっては氷点下に近い水準といったケースもあります。これでは、高齢者ならずともヒートショックを起こしかねません。住まいは住む人の生命を守るシェルターであるはずなのに、凶器、殺人マシーンになっているといっても過言ではありません。
特に、冬場に入浴中の事故死が急増するのは図表2にある通り。この時期に消費者庁が注意喚起を促す情報発信を行ったのもうなずけるところです。
いかに、この家庭内での事故を防ぐか――ひとつのヒントとして、交通事故の死者数の推移を挙げることができます。
年々減少する交通事故死者数に学ぶべきこと
図表1では、家庭内での溺死による死者数だけではなく、交通事故による死者数もグラフ化していますが、最近は年間5000人を切って、今や4000人台の前半まで減少しています。
その背景には、自動車の安全性に関する「性能向上」、それを利用する人の「意識改革」があります。住宅も「性能向上」を推進し「意識改革」を行えば、交通事故のように死者数を大幅に抑制できるのではないでしょうか。