まずは現状の住まいの「性能向上」が欠かせない
実際、注意喚起を行った消費者庁では、ヒートショックを起こさず安全に入浴するために、図表3にあるような5点のアドバイスを行っています。
死亡事故防止対策の一番目に挙げられたのが、脱衣所や浴室の温度を上げるという点。住まいの中の温度差を解消することで、ヒートショックを減らそうというわけです。これは、自動車の「性能向上」によって交通事故死が減少したことに対応します。浴室や脱衣所の温度アップという住宅の「性能向上」によって、溺死者も減らせるはずで、まずは、住まいの基本性能を高める必要があります。
・消費者庁の冬場の入浴に関するアドバイス
(1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう
(2)浴室は41度以下、湯に浸かる時間は10分までを目安にしましょう
(3)浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう
(4)アルコールが抜けるまで、また、食後すぐの入浴は控えましょう
(5)入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう
実は北海道では家庭内のヒートショックは少ない
その証左が図表4。これは、都道府県別にみた、入浴中の事故によるCPA(心配停止状態)によって救急搬送された人口1万人あたりの件数を示しています。もっともCPA件数が少ないのは冬場でも暖かい沖縄県。実は、温暖な沖縄県に次いで少ないのが、対極の寒冷地にある北海道なのです。
北海道の住宅に入ったことのある人なら、冬季の北海道の住宅がいかに暖かいかご存じでしょう。断熱材や二重窓などによって熱が逃げないようにして、室内の温度を一定に保っています。だからこそ、ヒートショックが起こりにくいのです。
ゼロエネルギーハウスならランニングコストが安くなる
CPA件数の多いエリアでも、断熱性の高い住まいにすれば、北海道や沖縄県並みに減らすことができるはずです。リフォームで断熱性を高めるほか、新築するならゼロエネルギーハウス(ZEH=ゼッチ)など断熱性能の高い住宅にしてください。
政府は20年までに新築住宅の半分をZEHにすることを目標に掲げて、各種の補助金や税制面での優遇制度などを実施しています。ZEHは断熱工事などのために建築費が若干高くなりますが、そのかなりの部分は補助金や税制面の優遇措置、さらに年間の光熱費のダウンなどでまかなえるはずです。