まいど、相場の福の神こと、藤本誠之です。マーケットアナリストで、年間約400社の上場企業経営者とのミーティングを通じて、真の成長企業を個人投資家に紹介するのが仕事です。たぶん、日本で一番上場企業経営者の貴重なお時間をいただいているアナリストです。
今回は、相場の福の神が考える2020年の相場展望を紹介させていただきます。2020年の最大の注目ポイントは、東京証券取引所の市場再編問題です。昨年のクリスマスイブ12月24日に、金融庁が東京証券取引所の市場改革に関する金融審査会の報告書案を公表しています。この内容を簡単にまとめると、下記になります。
・2022年前半めどに1部と2部、マザーズ、ジャスダックの4市場を3市場に再編するよう東証に促す。
・新1部(仮称・プライム市場)への新規上場は市場で売買可能な「流通時価総額」で線引きし、100億円以上を目安とする。
・現在の1部上場企業には適用せず、すべての企業が希望すれば新1部に移れる。2部とジャスダック市場に属する一定の時価総額を持つ企業の上場を念頭に「スタンダード市場(仮称)」を創設。マザーズ市場などに上場する新興企業向けには「グロース市場(同)」をつくるべきだとした。
・新TOPIX(主にプライムの流通時価総額100億円以上)への移行(2022年上半期)。
結局、現在の東証1部企業からは、すべての企業が希望すれば新1部に移れることにはなりました。まあ、なんとも日本的な既得権益を保護したような「モヤモヤ感」の残る結論とはなりましたが、とりあえず結論が出たことは幸いです。まさに、金融庁から個人投資家へのクリスマスプレゼントのようです。
2019年は、大型株に比べて中・小型株・新興市場銘柄のパフォーマンスが極端に悪かったです。これは、この東証市場再編で、現在の東証1部の銘柄の中で時価総額が小さい銘柄は東証1部から転落する可能性があったからです。
現在、東証1部に上場していると、上場の翌月末に東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄に自動的になります。現在(2019年11月末)の東証1部の時価総額は約640兆円です。日本最大の機関投資家である、国民の年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2018年末の国内株式の残高が38兆6556億円となっており、この約9割がTOPIX連動で運用されています。
そのほかに日本銀行が年間6兆円のペースでETF(上場投資信託)を買っており、その多くがTOPIX連動です。そのほかの年金・投信などでもTOPIX連動運用が多いので、全体として約60兆円程度がTOPIX連動運用されており、東証1部の全銘柄の発行済み株式の約9%をTOPIX運用で購入している計算になります。
逆に東証1部から転落すれば、浮動株比率にも影響されますが、大雑把には発行済み株式数の約9%の株式が売却されることになります。だから、東証1部から転落する可能性のある中・小型銘柄は非常に買いにくく、株価が低迷していたのです。
また、現在の東証1部への指定替えの基準は、東証マザーズ・2部からは時価総額40億円、東証ジャスダックからは時価総額250億円となっています。時価総額100億円の東証ジャスダック銘柄が東証1部に指定替えする場合、一旦東証2部に指定替えをしてから、東証1部に指定替えを再度行うことになります。
このジャスダックから2部への指定替えが2018年には20銘柄もあったのに、2019年には9銘柄に激減しています。わざわざ東証1部に指定替えしても、市場再編で転落の可能性があったからでしょう。
東証1部の中・小型銘柄の軟調が、マザーズ・ジャスダックなどの新興市場銘柄にも悪影響を与えていたのです。今回の市場再編で、一旦東証1部に指定替えになった銘柄は、希望すれば新1部に移れることになったので、2020年は東証1部への駆け込み上場が増加しそうです。
相場の福の神の2020年の注目銘柄は、ズバリ「東証1部駆け込み上場」銘柄です。現時点で、2020年に指定替えの可能性が高い5銘柄をご紹介いたしましょう。
ハイパー (3054)東証2部 1月7日終値 730円
ハイパーは、東京都中央区日本橋堀留町に本社がある法人向けパソコン販売と、アスクル代理店が2本柱の企業です。法人向けパソコン販売は大手・中堅・中小企業まで幅広く、小ロットから販売しています。パソコンは毎年、新機種が販売されますが、旧機種を大量仕入れすることにより、価格競争力のある価格で販売しています。販売数に応じたフロー収益のビジネスです。
アスクル代理店は、新規顧客獲得はマーケティングコストがかかりますが、リピート率も高く、既存顧客のメンテナンスコストは低いので、ストック型のビジネスです。この2つのビジネスモデルの異なった収益源を持つのが、ハイパーです。
エヌリンクス (6578)東証2部 1月7日終値 431円
エヌリンクスは、NHKの営業代行がメインビジネスです。また、メディア事業に注力しており、「登録したらあとは待つだけ」をコンセプトに、チャット形式を取り入れ、365日深夜でも家探しをお手伝いし新しい家探しの形を提供する「イエプラ」、スマートフォン向けゲームアプリの攻略サイト「アルテマ」、バーチャルYouTuberの制作を行うサービス「クリエイトVT」などを運営しています。光通信の保有比率が上昇しており、その思惑で昨年末にかけて株価が急上昇しています。
フェイスネットワーク (3489)東証マザーズ 1月7日終値 1445円
フェイスネットワークは、東京都渋谷区千駄ヶ谷に本社がある新築一棟マンションを販売する不動産会社です。「城南3区」と呼ばれる世田谷区・目黒区・渋谷区を中心にマンション用地を取得し、そこに投資用マンションを建設、投資家に一棟売りするのがメインビジネスです。土地の仕入れ、ファイナンス(資金調達)、設計、建設、物件管理、物件売却、さらには税金対策までワンストップで行えるのが大きな強みです。
メインブランドは、RC(鉄筋コンクリート)造をメインとし、無機質でスタイリッシュなデザインと優れた耐震性、セキュリティを実現し、今の時代に求められる品質を追究した投資型一棟マンションの「グランデュオ」です。
アイリックコーポレーション (7325)東証マザーズ 1月7日終値 1399円
アイリックコーポレーションは、東京都文京区本郷に本社がある日本初の来店型保険ショップ「保険クリニック」を運営している企業です。システムを自社開発しており、保険分析・検索システム「保険IQシステム」により、顧客からじっくりヒアリングして、システムに入力すると、その方に一番合った保険を選ぶことができます。
また、システムの提供・教育研修・販売支援などの事業や、前述の保険IQシステムをはじめ、保険の販売支援を行うためのシステム開発なども行っています。システムを自社開発していたことから、企業の人材難・生産性向上に役立つ画期的な人工知能OCR を用いた WEB クラウドサービス 「スマート OCR クラウドサービス」の提供を開始しており、高い利益率とともに急速な成長の可能性があります。
ブリッジインターナショナル (7039)東証マザーズ 1月7日終値 1915円
東京都世田谷区若林に本社がある、電話やメールで行う非訪問型営業(インサイドセールス)がメインビジネスの企業です。少子化や働き方改革で従業員の生産性アップが大きな経営課題となる企業にとって、大きな解決策となるインサイドセールスをアウトソースできる、上場企業ではオンリーワンのニッチトップ企業です。
インサイドセールス業界自体も大きな成長が期待できる上、ブリッジインターナショナルはAI(人工知能)を活用して、さらなる生産性アップにより、業界以上の大きな成長が期待できます。
(文=藤本誠之/マーケットアナリスト)