確定申告、自宅家賃やスマホ料金も経費に認められ、払う税金が安くなる!
今回は確定申告における副業の取り扱いについて、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が解説していきます。
亮子「最近、会社員の知人から、副業の相談を受けることが多くなってきた」
啓子「副業を認める会社も多くなってきている印象があります」
亮子「副業も規模が大きくなってくれば、確定申告しなくてはいけないよね」
啓子「そうですね。会社員の方であれば、副業は雑所得となるケースが多いと思います」
亮子「申告のために、日頃から領収書やレシートを受け取る習慣をつけてほしい! 何を経費にできるかわからないから」
経費(領収書)があれば……
ひとことで「副業」といっても、副業にもいろいろな方法が考えられます。たとえば本業以外にアルバイトをしていたら副業になりますし、インターネットで何かを販売しても副業、株などの取り引きで稼ぐのも副業といえます。副業について、言葉の定義は明確に決まっていません。
副業で稼いだお金に対する税金は、その所得の発生理由によって10種類に分類されて計算されますが、税法上も「副業」について明確に定義されているわけではありません。そこで、副業の内容や得た収入の性質などによって、どの所得に該当するかを判断する必要があり、所得の種類によって税金の計算方法や税率も異なります。
今回は、一般的に副業で分類されることが多い「雑所得」について解説していきます。雑所得になるのか、それとも他の所得になるのかは、事業規模の大きさや取引頻度など総合的に判断する必要があります。規模が大きかったり、取引頻度が高かったりすると「事業所得」に分類されます(事業所得については次回詳しく解説します)。ネットで何かを販売したり、記事を書いて原稿料をもらったりした場合、それで生計を立てるほどではない規模であれば一般的に雑所得に分類されます。
雑所得は「収入-経費」で所得を計算し、「所得×税率」で税金を計算します。そのため、経費の集計漏れがあると所得が実際よりも多くなってしまい、必要以上に税金を負担することになります。たとえば、税率が20%(所得税率10%+住民税率10%)の会社員が、副業で100万円の収入を得た場合、税金がどれくらいになるのか計算してみます。
※以下、説明の便宜上、簡易的な計算を行っています。実際の税額計算と異なりますのでご留意ください。
(1)領収書が全然なく、経費がゼロとなってしまった場合の税額
(収入100万円-経費0円)× 税率20% =20万円
経費がゼロの場合には、所得税と住民税合わせて20万円の税金がかかります。
(2)領収書があって50万円を経費にできた場合の税額
(収入100万円-経費50万円 )× 税率20% =10万円
経費が50万円の場合には、所得税と住民税合わせて10万円の税金がかかります。
(3)領収書があって80万円を経費にできる場合に、確定申告不要になるケース
一定の要件を満たす場合に、副業の所得が20万円以下であれば確定申告は不要とされています。80万円を経費にできる場合には、収入100万円から経費80万円を差し引いた金額が20万円以下となるので、確定申告が不要で、この副業に対して税金もかかりません。
なお、一定の要件とは、年末調整をしている方でもともと確定申告不要な場合が挙げられます。仮に医療費控除や住宅ローン控除などを適用するために確定申告をされる場合には、所得20万円以下であってもその分の所得部分もあわせて確定申告が必要となるので注意してくださいね。
また、確定申告は不要ですがこれは所得税だけに限った話です。住民税については申告が免除されていないので、確定申告をしなかった場合には、20万円以下の部分について、原則として住民税に関して各自治体への申告が必要となります。
(1)~(3)のケースのとおり、経費があるかないかでかかる税金に差が出ます。経費を漏れなく集計しておくことが、節税のポイントになりますので、領収書はきちんと受け取って保管しましょう。
こんなものも経費になる
自宅の家賃や水道光熱費、スマホの通信費や車のガソリン代なども経費にできる可能性があります。経費にできるのは副業のために使った分で、私的に使っている部分があればそれは経費になりませんので注意してください。たとえば、自宅兼事務所の場合には、家賃や水道光熱費、通信費などについて副業用に使用した割合分を経費にすることができます。その割合は使用面積や使用頻度などで算出しますが、割合算出の基準が決まっているわけではないので、事業割合がわからないという場合には専門家に相談することをおすすめします。
領収書がなくても大丈夫なケース
経費として認められる前提として、副業で稼ぐために使った経費かどうかが大切なポイントとなります。そして、使った経費の根拠書類となるのが領収書になるわけですが、一般的に領収書を受け取ることのない電車やバスなどの交通費は、領収書がなくても経費として認められます。このような経費については、副業のために使ったことがわかるように、日付、金額、支払先、支払目的など領収書と同程度の情報を記録しておきましょう。
ちなみに、領収書を紛失してしまったときも同様です。領収書がないから経費として認められないというわけではありません。あきらめずに記録をしておきましょう。また、クレジットカードで支払っている場合、カード利用明細は領収書の代わりになるわけではありませんが、副業のために支出した経費であることがわかれば経費として認められる可能性が高いです。カード明細も取っておくことをおすすめします。領収書ではなくても、いつ、だれに、いくら、何のために支出したかがわかるものがあれば、経費として認められる可能性があるということです。逆に、副業に関係ない支出は、領収書などがあっても経費として認められないので注意してくださいね。
亮子「集めたレシートが全部経費にできるわけじゃないけれど、本当は経費にできたはずの支出なのに書類がなくて経費にできなかったら、もったいないよね」
啓子「私たちは、確定申告書の作成はお手伝いできても、なくしてしまったレシートについては何もできることはありませんからね」
亮子「私は学生時代から確定申告を続けているので、レシートをもらったり、『これは経費になるかな?』と無意識に考えていたりするけれど……」
啓子「レシートをもらって保管しておいてもらうだけで、お手伝いもしやすくなります!」
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)