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米山秀隆「不動産の真実」

家の処分問題深刻化、「売り手」側が百万円払う現実…ローンなしで家利用の方法も

文=米山秀隆/富士通総研主席研究員
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 所有しなくても、一定期間、十分な質と広さの住宅(長期優良住宅)に住める仕組みで、期間が終われば次の利用者に回すため、空き家のまま放置されることもない。実施されるつくば市竹園地区は、研究学園都市の開発が始まって以来の古い住宅地であるが、再開発を行うにあたって、このような仕組みを取り入れることにした。つくば市は、人口流入などで将来にわたって住宅需要の増加が見込まれており、そうした地区だからこそ試みることができるともいえる。

メリット周知が普及のカギ

 この仕組みが成功するかどうかは現時点ではまだわからないが、所有することにこだわらず、シェアに抵抗がない若い世代に受け入れられれば、今後、広がっていく可能性もある。

 この仕組みは近年、不動産分野において、所有するビルやホテルなどを証券化して売却し、以後、賃借料を支払って使う形態があるが、それに類似している。所有する主体が、不動産売却によって財務状態を改善したり、将来にわたって不動産を所有し続けることのリスクから逃れたりしようとする場合に効果を持つ。

 住宅を定期利用する仕組みも、所有する場合に比べて費用負担が少なくてすみ、かつ、所有し続ける場合の、冒頭で述べたようなさまざまなリスクを回避できるメリットがある。所有するために多額の住宅ローンを負う必要もなく、また、所有にしばられず、高齢期の住まいを自由に選択することもできる。

 社会的なメリットとしては、空き家が発生しにくいことに加え、住宅を短期間で建て替えることなく、スケルトンを長く使うことで住宅廃棄物の発生を抑え、資源の有効利用にもつながる。このように、所有と賃貸の中間に位置する定期利用の仕組みは、さまざまなメリットを持つ。メリットを十分周知させることで利用者を増やし、この試みが成功を収めることを期待したい。
(文=米山秀隆/富士通総研主席研究員)

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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